「考えたことなかった」守備手袋の存在 森友哉が“素手”にこだわる理由「そりゃ痛いっすよ!」

オリックス・森友哉【写真:北野正樹】
オリックス・森友哉【写真:北野正樹】

オリックス・森友哉捕手、捕球のこだわりは「ボールにより近く」

 繊細な感覚を大切にして投手陣をリードする。オリックスの森友哉捕手は、どんな剛球を放つ投手が相手でも、守備手袋をしない。ミットにすっと左手を入れて、マスクを被る。“素手”での捕球は「ボールにより近く。そういう考え方です」と冷静に話す。

 些細な問いかけにも、さっと足を止めて答えた。数秒間、沈黙した後に「自分は全然、考えたことがなかったですね。『なんで手袋をするんですか?』という考え方になります」と苦笑いで答えをくれた。

 今オフにポスティングシステムを利用してのドジャース移籍が決まった山本由伸投手や、プロ初登板を昨季の開幕戦で託され、9勝を挙げて新人王に輝いた山下舜平大投手ら、チームには豪速球を武器とする投手が目立った。

 実際、2022年オフにFA権を行使して日本ハムに移籍した伏見寅威捕手や、山本と主にバッテリーを組んだ若月健矢捕手は、守備手袋を装着してからミットを構える。さらに捕球部分である人差し指の付け根付近にはパッドを入れ、少しでも衝撃を吸収しようと工夫をしていた。

慣れた“素手”キャッチも「そりゃ、痛いっすよ!(笑)」

 森は、ニコリと目を細めて言う。「もちろん、痛いですよ? だから、自分も人差し指を(中指方向に)1つずらしてます」。主に外野手に多い“指抜き”キャッチングで、剛腕たちのボールを受け止めてきた。

「僕は手袋をすると、感触がゴワゴワするのが嫌という感覚ですね。できるだけ自分の手で掴むということを考えています。手袋をつけて(捕球)できないことはないですけど、ちょっと練習が必要ですね」

 大阪桐蔭では1学年上の藤浪晋太郎投手らを受け、2013年ドラフト1位で西武に入団してからも数々の名投手のボールを捕ってきた。2023年は守備率10割を記録。「素手でずっとやってきましたからね。いきなり手袋をつけるという発想はなかったです。プロに入ってから、何回か試したことはありますよ。でも、僕はこの(素手の)スタイルですね」。

 問いかけへの解答を終えると、自然と関西弁が飛び出した。「そりゃ、痛いっすよ!(笑)。痛いですけど、耐えられへんくらいの痛さじゃないんで」。その一言で、投手陣が信頼できる存在だと、すぐにわかる。

◯真柴健(ましば・けん)1994年8月、大阪府生まれ。京都産業大学卒業後の2017年に日刊スポーツ新聞社へ入社。3年間の阪神担当を経て、2020年からオリックス担当。オリックス勝利の瞬間に「おりほーツイート」するのが、ちまたで話題に。担当3年間で最下位、リーグ優勝、悲願の日本一を見届け、新聞記者の卒業を決意。2023年2月からFull-Count編集部へ。

(真柴健 / Ken Mashiba)

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