由伸らの“穴”は「8割方埋まっている」 戦力維持を可能にする…オリ中嶋流の選手育成
野口寿浩氏が分析…オリ中嶋監督の方針がチームにもたらす効果
オリックスの中嶋聡監督は昨季、投手陣には怪我予防のため3連投をさせないなど、コンディションを重視した采配でリーグ3連覇を達成した。春季キャンプでも原則としてブルペンで100球以上は投げさせないという。投手陣への配慮がチームにどのような影響をもたらしているのか。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が分析した。
「投手は100球を投げることがなくても、必要なら遠投などで補うことはできる。そこは自主性ですよね。自分で考えてやらないといけないから、しんどいと言えばしんどいかもしれません」
現在の野球界は、練習方法が大きく変わってきている。「昔は投げる体力は投げてつけるという考えだったけど、今は科学的な要素が入ってきている。でも、投げる肩、肘の耐久力は投げて作るものなのかもしれないとも思います」。
野口氏は阪神時代に能見篤史、横浜(現DeNA)時代に三浦大輔がキャンプで毎日のように投げ込む姿を見てきた。「能見はいつまでも投げていた。三浦も投げる強弱はあったけど、マウンドの傾斜を使ってずっと投げていた。それでも選手生命は長かったわけだから」と語る。
中嶋監督はシーズン中もオーバーワークさせないことに徹している。「それでも怪我人は出る時は出る。(2021年ドラフト1位の)椋木も2022年にトミー・ジョン手術を受けています。なので、どちらが正解なのかは正直分かりません。ひとつ思うのは練習の量でなく、やり方なのかなということです」。
椋木のやり方に問題があったということではなく、その選手にあった練習方法、体の使い方、持って生まれた体の強度など、多くの要素が怪我の有無を左右する。中嶋監督による“制限”は、その確率を減らすための方法ではないか、ということだ。
今季も「オリックスが勝ちそうな気がしています」
キャンプでは全体練習に多くの時間を費やすより、個別での練習を促すという。「アマ球界で名を馳せた人たちの集まりがプロの世界。そういう選手を信頼してやっているんだと思います。(サインプレーなど)決まりごとはあるから、そこはしっかりやるけど、あとはお前たちに任せるよ、ということじゃないかな。投手と同じで自主性ですよね」。
結果として「そう言われると選手はやっておこうとなる。パフォーマンスが落ちたら個人の責任になる。それはやりますよ」。自然と個々のレベルアップにつながり、チーム力も高い水準を維持できているというわけだ。
近年のドラフト戦略にも注目している。キャンプを視察に訪れていたパ・リーグ球団のスコアラーがドラフト2位の河内康介投手(聖カタリナ学園)と3位の東松快征投手(享栄高)を大絶賛していたという。
「その話を聞いてもそうですが、獲られたくない好素材の高校生を上位で指名している。鍛えて試合で使う。宮城や紅林なんかもそう。中嶋監督なのか、福良GMの考えなのかは分かりませんが、それがいい循環になっていますね」
オリックスには毎年のように期待の新星が現れる。「山本由伸、山崎福也が抜けましたが、(その穴は)8割方は埋まっているのだと思います。今シーズンは去年ようなぶっちぎりではないと思いますが、終わってみたらオリックスが勝ちそうな気がしています。西川(龍馬)が入って去年よりは確実に攻撃力は上がっていますし」。野口氏は大エースが抜けたオリックスを優勝予想とした。
(湯浅大 / Dai Yuasa)