異例の処遇に「ありがたい」 兼任コーチ安達了一が“会議”に出席しない理由
オリックス・安達兼任コーチ「球団の配慮には感謝しています」
コーチを兼務しても、選手としての仕事に集中する。今季から内野守備・走塁コーチ兼任となったオリックスの安達了一内野手が、コーチ会議に出席することなく現役生活を貫いている。1軍の出場選手登録を抹消されてもコーチとしてチームに同行し、コンディションを整えてほしいとの球団の配慮がそこにある。「ありがたいことです。体のことを気遣ってくれた球団の配慮には感謝しています」。キャンプで選手として過ごした安達が、異例の処遇に改めて感謝の気持ちを口にした。
コーチ陣は選手より早く球場入りし、全体練習後も特打などに付き添う。練習終了後には選手のコンディション報告や確認などがコーチ会議で話し合われる。コーチを兼任すればコーチ会議に出席するのが通例。2021年に阪神から移籍した能見篤史さんが投手コーチ兼任を務めていた時には、コーチ会議のメンバーとして出席していた。
一般的に兼任コーチに就任すると、指導者への道が開かれる一方で選手としての出場機会は減る方向にある。ただ、今回の処遇は“逆転の発想”だ。安達の現役生活を1日でも延ばそうという球団の考えから出たものだった。安達は2016年に国指定の難病「潰瘍性大腸炎」と診断され約1か月入院した。復帰後も首脳陣は体調面を考え、シーズン中も〝休養日〟を設けるなど球団はコンディション調整に配慮してきた。
球団が心配するのは、チーム事情などで安達が2軍に行った際の体調管理。空調設備が整ったドーム球場が多い1軍とは違い、屋外で行われるウエスタン・リーグ。真夏の試合は若手選手でさえ体力を奪われる過酷なもの。移動も、在阪の阪神戦を除き長距離となる。ホームゲームも和歌山県や奈良県など本拠地以外で開催されることも多い。
福良淳一GMは「2軍に落ちて夏の暑い舞洲に行くと、体調を崩してしまいます。彼の場合、再発が怖いですから」と説明する。安達も「ファームでは夏場に体調を崩してしまうこともありました」と明かす。主力選手として2軍でも手を抜くことなく、背中でプロのあるべき姿を見せることも体調面を考えた時には、大きなマイナスにもなった。
福良GM「シーズン中も基本的に1軍に同行させます」
キャンプイン前日の合同自主トレでは、若手選手にノックを打ったりしていたが、基本的にコーチとして教えることはなかった。キャンプ中はコーチとしての役割やコーチ会議に出席する時間を、自主練習や休息にあてることでコンディションを整えていた。
もちろん、これまで通り若手選手からアドバイスを求められれば、応じる。「選手としてしっかりやっていきたいとの思いはありますが、若い選手たちに積極的に声をかけて教えられれば、と思います」。福良GMは「シーズン中も基本的に1軍に同行させます。2軍には『打ちたい』という時に行くという形になります」と説明する。水本勝己ヘッドコーチが「シーズン中は能見の時のようにコーチ会議に出席するようになるのか、まだ決まっていません」と言うように、今後の方針は定まっていない。
今年1月7日に36歳を迎えたベテラン。走者を進める右打ち、球際に強い華麗な守備が魅力。球団の配慮でさらに“技”が研ぎ澄まされる。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)