中日23歳は「忍者みたい」 巨人名手も一目置く能力…超ハイレベルな二塁手GG賞争い
マウンド上の菅野が脱帽…感謝示した吉川のジャンピングキャッチ
■巨人 3ー2 中日(25日・東京ドーム)
二塁手の美技の競演だった。25日の巨人-中日戦(東京ドーム)で、中日2年目・田中幹也内野手、巨人・吉川尚輝内野手がファインプレーを連発した。
今季中日の「2番・二塁」に定着し、チームの躍進を支えているのが、身長166センチの小兵・田中。この日は初回の守備で、巨人・坂本勇人内野手が放った打球がマウンドに当たり高く跳ね上がったのを、二塁ベース後方に回り込みショートバウンドで捕球すると、目にも止まらぬ高速ジャンピングスローでアウトにした。内野安打に見えた打球を、難なくさばいた。
2回1死で丸佳浩外野手が放った痛烈な低いライナーは、目の前でワンバウンドする難しい打球になったが、田中は咄嗟に後ろへ重心を移し、尻もちをつきながらグラブに収めて凡打に変えた。
2022年ドラフト6位で亜大から入団。1年目の昨季も、3月上旬に行われた侍ジャパンVS中日の壮行試合で活躍して脚光を浴び、開幕1軍スタメンは確実な状況だった。ところが、オープン戦で右肩脱臼の大怪我を負って手術を受け、結局1軍出場なしに終わった。それでも仕切り直しとなった今季、改めて超人的なフットワークを連日披露している。
プロ8年目の吉川も負けてはいない。初回の守備で先頭の中日・岡林勇希外野手が放った二遊間のゴロを、逆シングルからのジャンピングスローでアウトに。
3回には先頭の村松開人内野手のライナーを、体を目いっぱい伸ばしてジャンピングキャッチした。これにはマウンド上の菅野智之投手が、帽子を取って吉川に感謝の気持ちを示したほど。吉川自身「菅野さんがめちゃくちゃいい投球をしていたので、先頭を出さずにアウトにできてよかったです」とうなずいた。
ゴールデングラブ級の二塁手競演──。そう称賛されると、吉川は「(ゴールデン・グラブ賞は)獲ったことないですけど。すみません」と茶目っ気たっぷりに笑った。
10年連続で広島・菊池が君臨、昨季は阪神・中野が初受賞
セ・リーグ二塁手のゴールデン・グラブ賞は、広島・菊池涼介内野手が2013年から2022年まで10年連続で君臨。昨季は、日本一になった阪神・中野拓夢内野手が初受賞した。とは言え、吉川の守備力にも定評があり、昨季の守備率.992は、二塁手では菊池の.995に次ぐリーグ2位で、中野の.988を上回っていた。今季は、新人王資格も持つ田中を含めた争いになるかもしれない。
吉川は田中を「すごく動きが速くて、守備範囲も広い。菊池さんを見ているような、忍者みたいな動きですね。去年は怪我をして1年間いませんでしたが、対戦相手にとっては嫌な存在です」と評する。さらに「足もめちゃくちゃ速くて、すごくいい選手。僕も負けないようにと思います。必死です」と笑顔を浮かべながら付け加えた。
この日の吉川は打っても、2点ビハインドで迎えた6回先頭で、右翼フェンス最上部のネットを直撃する二塁打。柳裕也投手からこの日チーム初安打を放ち、坂本の逆転3ランへつなげた。あと十数センチ弾道が高ければホームランだった二塁打について「ちゃんとウエートトレーニングをします。すみません」と笑わせた後、「ホームランでなかったから、(坂本の)3ランが出たのかもしれないので、よかったです」と笑った。
あくまで「守備からリズムをつくっていくことが大事だと思っています。田中くんもいいプレーをしていましたし、守備でミスが出ると流れが相手に行ってしまいますから」と吉川は言う。まさに、お金を払って見にいく価値のある好守の競演だった。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)