【高校野球】初出場校が強豪校を撃破 津商業にあって智弁和歌山に欠けていたもの
智弁和歌山はミスから綻び、想定外の展開に
第97回夏の甲子園。大会4日目の第1試合で、春夏通じて初出場の三重代表の津商業が全国制覇の経験もある智弁和歌山に9対4で逆転勝ちし、2回戦に進んだ。智弁和歌山からするとまさかの逆転負け。試合後の高嶋仁監督は「7失策は、今までみたことがない」と振り返るなど、ミスから綻びが出るという想定外の展開となった。
大学日本代表監督や侍ジャパンでコーチを務めた経験のある小島啓民氏は「リズムを失った際の立て直しがきかないという、初戦の難しさが浮き彫りになった試合だった」と振り返る。個々の技量を比較しても、前評判では智弁和歌山が勝っていた。しかし最終的には津商業が圧倒した。
津商業は、まさに無欲の勝利だった。その象徴が先発・坂倉投手の投球だ。小島氏は「体格に恵まれた智弁和歌山打線に対すると普通は慎重になりがちですが、大胆に自分のベストボールを力の限り投げ込んでいました。初回こそ捕まりかけましたが、まさに気力が技術を上回ったというような感じの投球内容でしたね。投手は『逃げるな!』という姿勢が大事だということを改めて思い出せてくれました」と話す。正面から向かっていったのが勝算の1つだった。
それでも先制点を取ったのは智弁和歌山。そこに落とし穴があった。小島氏は「初回に簡単に先取点を取れただけに、『いつでも打てる』という感覚に陥り、少し攻撃が雑になったように映りました。追いかける方は無欲ですから、積極的なプレーが目立ち、結果もラッキーな方向に繋がります。逆に追いかけられる方は、回を追うごとにプレッシャーがかかり、気持ちが守りに入って結果的に守備でミスをするという悪循環となってしまいました。智弁和歌山の選手と言えども、完全に浮き足立っていましたから『同じ高校生なんだな』という印象を受けました」と分析する。