“例外的な”山崎福也の覚醒 リーグトップ6勝…先発固定で劇的に改善した指標
交流戦終了時点でリーグトップの6勝
2024年から日本ハムでプレーしている山崎福也投手が、交流戦終了時点でパ・リーグトップタイの6勝をマークしている。白星の数だけでなく、勝率も.750と非常に優秀だ。さらに、防御率も2.47と10年間のキャリアで最高の水準に達しており、自身初の個人タイトル獲得の可能性もある。
山崎が記録してきた各種の指標について見ていきたい。通算の奪三振率は5.69と控えめな数字であり、キャリアを通じて打たせて取る投球を展開していることがわかる。その一方で、与四球率は通算2.79と優秀な水準に達しており、制球の良さと多彩な球種を生かして、打者を手玉に取ってきたことが示されている。
ただし、2015年から2020年までの6年間における与四球率は全て3点台以上と、キャリア初期の与四球率はやや高くなっていた。しかし、2021年以降の4年間はいずれも与四球率が2点台以下、そのうち3シーズンは1点台と、近年に入ってからは制球面の劇的な改善が見られている。
2019年までは先発とリリーフを兼任していたが、2020年から先発に固定され、翌2021年からは大きく与四球率が低下している点が興味深い。一般的には、長いイニングを消化する必要がある先発投手のほうが、短いイニングに集中できるリリーフよりも与四球率が高くなる傾向にある。それだけに、山崎は例外的なケースと考えられる。
先発転向後は与四球率が改善
また、奪三振率もリリーフに比べて先発の方が数字が低下しやすいとされている。だが、先発転向後の2021年に奪三振率7.14というキャリアハイの数字を記録し、2021年、2022年、2024年はいずれもキャリア平均に近い奪三振率を残した。先発転向後は与四球率の改善に加えて、奪三振率への悪影響も生じていないことがわかる。
さらに、奪三振を与四球で割って求める、制球力や投手としての能力を示す「K/BB」においても同様の傾向が見られる。2015年から2020年までの6シーズンにおけるK/BBは、いずれも1点台と低い水準にとどまっていたが、2021年からの4シーズンはK/BBが3点台まで向上し、一般的に優秀とされる3.50という水準に大きく近づいている。
これらの事実を鑑みても、類を見ないほどに先発としての適性が高かったと考えられる。そして、新天地で迎えた今シーズンも与四球率は1.73と優秀で、奪三振率も5.67とキャリア平均に近い数字を残している。
被打率に関しては、先発時とリリーフ時で大きな違いは見られない。ただし、2024年の被打率は.242と、キャリア平均の数字(.253)ならびに、過去3シーズンの数字に比べても.010ほど低くなっている。痛打されるケースの減少が、今季キャリア平均よりも優秀な防御率を記録している理由の一つとなっている可能性はありそうだ。
リリーフ時は安定しなかった与四球率が先発転向を機に劇的に改善し、制球良く打たせて取る投球スタイルを確立。ずば抜けた先発適性の高さを発揮してオリックスのリーグ3連覇に貢献した実力は、新天地で迎えた今季も存分に生かされているといえよう。
防御率だけでなく、被打率やWHIPも例年以上に優秀な数字を残しているだけに、過去3年間を大きく上回る成績を記録する可能性も十二分にあるはずだ。移籍を機に投手としてさらなる飛躍を果たしつつある制球力抜群の左腕が見せる巧みな投球術からは、今後も目を離すことができなさそうだ。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)