巨人・阿部監督が与える挽回のチャンス “勝利の方程式”確立へ…助っ人に寄せる信頼
阿部監督「ケラーとバルで行こうと、僕は決めたので」
■巨人 3ー2 広島(28日・東京ドーム)
巨人は28日の広島戦(東京ドーム)に3-2で勝利。延長10回に丸佳浩外野手がサヨナラの5号ソロを放った。今季72試合目で、ちょうどシーズン143試合の折り返し地点を過ぎた。勝負の後半へ、就任1年目の阿部慎之助監督が絶大な信頼を強調したのは、カイル・ケラー投手とアルベルト・バルドナード投手の外国人リリーバー2人だった。
「8回と9回はケラーとバル(バルドナード)で行こうと、僕は決めたので」。阿部監督は試合後の会見でキッパリ言い切った。
2-1とリードして迎えた8回。阿部監督がマウンドへ送ったケラーは前日27日のDeNA戦(横浜スタジアム)で延長10回に登板し、宮崎敏郎内野手にサヨナラソロを被弾したばかりだった。
この日も1死から秋山翔吾外野手に右前打され、さらに自身の牽制悪送球で得点圏の二塁へ進めてしまう。しかし野間峻祥外野手をスプリットで空振り三振に仕留め、続く上本崇司内野手のバットを152キロの速球でへし折り、一飛に打ち取り失点を免れた。
阿部監督は信頼する選手には、失敗しても、すぐに挽回のチャンスを与える。ケラーが22日のヤクルト戦(東京ドーム)でドミンゴ・サンタナ外野手にバックスクリーンへ試合を決定づける2ランを被弾すると、翌23日の同カードで1点リードの8回、あえてサンタナを迎えたところでマウンドへ送った。
ただ、この日は9回にバルドナードが思わぬ形でつまずいた。2死三塁で田中広輔内野手の内角高めを狙った153キロの速球が、外角でワンバウンドして暴投となり、同点に追いつかれたのだ。昨季途中に巨人入りした左腕バルドナードは、今季は右肩の違和感で戦列を離れた大勢投手に代わって抑えの座に就き、5月10日のヤクルト戦以降9セーブをあげている。
1軍復帰も近い大勢が「いきなり9回かと聞かれたら、わからない」
杉内俊哉投手チーフコーチは、バルドナードの暴投について「抑えをやるようになってから、制球が少し乱れている。7回とか8回に投げている時は、あんな感じではなかった。抑えとなれば、出力が上がるし、スピードが出る分、コントロールが乱れる可能性がある。それは仕方ないと思います」とかばった。
阿部監督も、雰囲気を和ませようとしたのか、「(暴投は)魔が差したのかな。あれはキラー・カーンでも捕れなかったのではないかな」とおどけた後、「キラー・カーンではなくて、オリバー・カーンだな」と訂正した。キラー・カーンはかつて悪役として鳴らし、オリバー・カーンはかつての名ゴールキーパーだ。
さらに指揮官は「連投したら休ませなければならないが、基本は8回がケラー、9回がバルと考えています。そこは変わらずにやっていきたい」と繰り返し強調した。ここにきて多少の綻びが見えるとはいえ、打線が低調な中で、継投の要所をこなしてきた両外国人投手への信頼は厚い。杉内コーチも「前半戦ずっと頑張っていますから、特にバルちゃんは1回や2回打たれたくらいでは変えないと、監督は決めているのではないでしょうか」とうなずいた。
“勝利の方程式”の確立を理想とする阿部監督が、もともと開幕当初に考えていたのは、7回・西舘勇陽投手、8回・中川皓太投手、9回・大勢の流れだった。左膝痛で離脱中の中川も、大勢も、2軍で調整登板を重ねており、1軍復帰が近い。
中川と大勢が復帰すれば、ケラーとバルドナードは少し気楽な役割に戻るのかもしれない。だが、杉内コーチは「大勢が1軍復帰後、いきなり9回かと聞かれたら、わからない。大勢には1軍でまた実績を残して9回を勝ち取ってほしいと、監督は考えているかもしれない。僕も正直言って、大勢に故障明けでいきなり9回を任せるのは不安な部分もある」と慎重だ。
バルドナードは、阿部監督の信頼のほどを聞いて「ありがたい。こういう難しい試合の後でも、信頼を言葉にして表してもらえると自信になる。チームメートを含めて期待に感謝したい」と神妙に語った。言語を超えた信頼関係が、チームの浮沈に大きく関わる。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)