コーチ絶賛の巨人27歳、小林や大城卓との“違い”とは リーグ1位「阻止率.500」のワケ

阪神戦に出場した巨人・岸田行倫【写真:矢口亨】
阪神戦に出場した巨人・岸田行倫【写真:矢口亨】

相手のエンドランを崩し「度胸を据えて外せた」

 巨人は15~17日に本拠地・東京ドームで行われた阪神3連戦に2勝1敗で勝ち越し。大混戦のセ・リーグで単独首位をキープした。就任1年目の阿部慎之助監督の采配の特長が見えてきた3連戦でもあった。

 4-3で競り勝った17日の第3戦。勝敗を分けたポイントの1つが、相手のヒットエンドランを崩した6回の守備だった。巨人1点リードで、場面は1死一塁。坂本誠志郎捕手の打席で、カウント2-2から一塁走者の大山悠輔内野手がスタートを切った。しかし、捕手の岸田行倫はあらかじめ外角に大きく外れるピッチアウトを要求しており、坂本が出したバットは空を切る。岸田の二塁送球も正確で大山を刺し、“三振ゲッツー”に仕留めた。

 このピッチアウトは、ベンチの阿部監督からのサインだった。指揮官は「度胸を据えてエンドランを外せたので、長年キャッチャーをやっていてよかったと思いました。岸田もナイスボールを投げたし、あそこがたぶん勝負の分かれ目だったんじゃないかと思います」と満足そうにうなずいた。

 さらに阿部監督は「昨日、(阪神の)岡田(彰布監督)さんが『走れ走れ言うとるのに走らん』と言っていたそうなので、自分の勝手な勘でしたが、動いてくるならここかなと思いました」と明かす。相手の岡田監督は16日の試合後、自チームの選手について「何回(盗塁の)サインを出しても走らん」と怒りを滲ませていたと報じられた。それを逆手に取った格好だ。

「捕手経験」を強調した阿部監督だが、巨人の1軍首脳陣には阿部監督、村田善則総合コーチ、実松一成バッテリーコーチと計3人も“元捕手”がいる。村田コーチは「あの場面は(相手がエンドランを仕掛けてこなかった場合)、カウントを3-2にしてしまうのでギャンブル性が高く、ベンチが責任を持たないと、選手の判断ではなかなかピッチアウトはできません。阿部監督の判断の下、選手がやってくれたということです」と説明した。

岸田のスタメン出場が激増…両リーグを通じてトップの盗塁阻止率誇る

 阿部監督にしてみれば采配がズバリ的中し、胸のすく思いだっただろうが、「僕はまだ1年目で、長い間監督をされている方々を相手にしているので、なるほどなと思う時がたくさんあります。勉強させてもらいながら、キャッチャー目線でいつも見るようにしています」と謙虚に語った。

 選手のピースもはまった。というのも、岸田は今季、両リーグを通じてトップの盗塁阻止率.500を誇っている。捕手としてのスタメン出場数も、昨年はチームで2番目の15試合(全試合の10.5%)に過ぎなかったが、今季はチーム86試合中、最多の44試合(51.2%)を占めている。

 小林誠司捕手のような“バズーカ肩”ではないが、スローイングに安定感がある。村田コーチは「派手さはないけれど、しっかり準備して相手が動いてくる可能性がある時に、しっかり警戒心を高めていることが、盗塁阻止率に結びついていると思います」と指摘。「実際のところ、盗塁は肩が強いだけでは刺せません。投手との共同作業ですから。たとえば、クイックの甘い投手に対しては、相手が動いてきそうなタイミングで注意を与えるとか、岸田はそういうことができる捕手です」と評する。

 キャッチャー目線を生かした駆け引き、選手起用で特長が浮き彫りになった阿部監督。前日(16日)には、勝ったにも関わらず、攻撃陣の拙攻に「みんなヒーローになりたくねえのかな。チャンスなのに悲壮感しか伝わってこない」と今季MAXの怒りを露わにした。結果オーライでは済まさない姿勢を、チーム内外に強調したとも言える。新人監督の実像が少しずつ見えてきた。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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