盤石の投手陣を後押しする天才打者 最強「.967」…達した“異次元の領域”
ソフトバンクの前半戦をデータで検証する
ソフトバンクは小久保裕紀新監督のもと、捲土重来を期して今季に挑んでいる。山川穂高内野手、アダム・ウォーカー外野手がラインナップに入ったことによって厚みを増した攻撃陣は開幕からその実力を発揮している。
5月末に柳田悠岐外野手が怪我により離脱したが、柳町達外野手や正木智也外野手といった若手が台頭し、ハイレベルな攻撃力を維持し続けている。前半戦終了時点で貯金26はダントツで、前評判通りの戦いぶり。ペナントレース前半戦の得点と失点の「移動平均」から、チームがどの時期にどのような波だったかを検証する。(数字、成績は7月21日現在)
とにかく、前半戦は投打のバランスが崩れることなく順調だった。1試合平均得点は4.13、平均失点2.58と1.05の開きがある。先制率60.9%、先制時勝率80.8%はいずれも12球団で最も高く、安定の戦いぶりを物語っている。
さらに、攻撃陣が目立つホークスだが、今季の投手陣の安定感はリーグの中で群を抜いている。先発投手陣は防御率2.39、被打率.215、WHIP1.02、K/BB 3.37、QS率67.8%の成績で、救援陣も奮闘。リリーフは防御率2.40、被打率.192、WHIP1.06、K/BB 2.50。リーグ最良の数値を誇っている。
先発投手陣では有原航平投手がQS率93.8%、リバン・モイネロ投手が93.3%と高水準で、役割を十分に果たしている。救援陣はクローザーのロベルト・オスナ投手に繋ぐまでの津森宥紀投手、松本裕樹投手、ダーウィンゾン・ヘルナンデス投手、藤井皓哉投手といった面々が随所で貢献している。
攻撃陣では、昨年から加入した近藤健介外野手の攻撃力が“異次元の領域”に達していると言っても過言ではないだろう。元来の選球眼、コンタクト能力に加え、長打力も発揮され、21日時点で打率.321(リーグ1位)、13本塁打(リーグ2位)、49打点(リーグ3位)と令和初のパ・リーグの3冠王も射程圏内である。なおOPS.967は両リーグ通じてトップである。
現時点で穴と言えるようなポジションは見つからず、主力の離脱がなければこのまま後半戦も勢いは続くものと考えられる。そんな中で小久保監督が若手にもチャンスを与え、成長させながらチームが勝っていくというシナリオが成就すれば、また常勝ホークスの基盤が固められることだろう。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。