攻撃力は健在も…解消されないヤクルトの“泣き所” 12球団ワーストの44.8%
塩見ら故障離脱も…前半戦の1試合平均3.53点はリーグ1位
2021年、2022年にリーグ連覇を達成したヤクルトは今季前半戦、リーグ屈指の攻撃力を持ちながらも、投打の噛み合わせが悪く今ひとつ調子に乗り切れなかった。今回は前半戦の得点と失点の「移動平均」から、チームがどの時期にどのような波だったかを検証する。(数字、成績は7月21日現在)
「移動平均」とは、大きく変動する時系列データの大まかな傾向を読み取るための統計指標。開幕から5月初旬までの32試合で5得点以上が11試合と、ツボにハマった時の攻撃の破壊力は相手にとって脅威である。初回得点率29.9%は12球団で1位。先手を取ることで、防御率3点台後半の投手陣をうまくカバーしてきた。
しかし、5月にアクシデントが発生。2連覇時に1番打者として貢献した塩見泰隆外野手は、再び1番打者に復帰していたが、怪我により離脱。4月下旬に復帰した山田哲人内野手も再び離脱。前半戦の攻撃の牽引役だったドミンゴ・サンタナ外野手も7月に入り怪我で離脱と、相次ぐ主力の故障に泣かされた。
次に、各ポジションの得点力を両リーグ平均と比較した。野手はポジションごとのwRAA、投手はRSAAで比較。村上宗隆内野手、ホセ・オスナ内野手、サンタナを中心とした攻撃陣の破壊力は今年も健在。1試合平均得点3.53はリーグ1位。特にサンタナの打率.315、OPS.910はリーグの中でも抜きん出ている。
先発に苦慮…規定投球回到達者はゼロ、QS率44.8%は12球団ワースト
ただ、先発投手陣は整備されず、エース小川泰弘投手の不調もあり、規定投球回に達した投じた投手が1人もいない状況。QS率44.8%は12球団ワーストだった。また、先制時勝率は58.5%と、こちらも12球団ワースト。先制してもリードを守りきれない苦しい状況を物語っている。
後半戦はチームトップのQS率64.2%のミゲル・ヤフーレ投手や3年ぶりに復帰した奥川恭伸投手、オールスター出場の吉村貢司郎らが中心となって立て直しを図りたい。
打線では、上位打線の構築が急務である。打撃の成長著しい長岡秀樹内野手をはじめ、丸山和郁外野手、赤羽由紘外野手、宮本丈内野手の出塁率増強が浮上のカギとなるだろう。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。