西川龍馬に“惚れる”ボールボーイたち 試合中に歓喜…「ありがとう」が生む好循環

オリックス・西川龍馬【写真:北野正樹】
オリックス・西川龍馬【写真:北野正樹】

オリックス・西川龍馬の人柄に“魅了”されたボールボーイたち

 何気ない言葉や仕草が、ファンを増やす。オリックスの西川龍馬外野手が見せる、プレーを離れた立ち居振る舞いが、ボールボーイまでを“味方”にしている。

 6月15日、ヤクルトとの交流戦(京セラドーム)。0-1で迎えた3回、太田椋内野手の適時打で追いつき、なおも1死一、二塁。西川はサイスニードの151キロのストレートを右翼へはじき返した。フェンスをギリギリで越える3ラン。ベンチのチームメートやスタンドのファンに見えない場所で、歓喜する若者たちがいた。

 アルバイトスタッフのボールボーイだった。両ベンチ脇に座り球審にボールを届けたり、バットやエルボーガードなどのプロテクター、手袋などをベンチの選手に手渡したりするのが役割。声をあげたのは、グラウンドと扉を隔てた通路で待機している数人で、特定のチームを応援しているわけではないが、彼らにとって西川は特別な存在だという。

 ボールボーイの証言は、こうだ。「例えば、打者が二塁打を打つと、走塁に邪魔になる足や膝のガードなどをベースまで走って受け取りにいくのですが、西川さんは手渡した後、必ず肩をポンポンとたたいて『ありがとう』と言って下さるんです。広島時代に交流戦で、京セラで試合をした時もしてもらっていました」。話を終えると、笑顔が弾けた。

 また、別のボールボーイは西川の守備位置に近い左翼のファウルゾーンで配置についた際、ファウルボールを追いかけようとして西川から制止されたという。「守備位置から遠いのに、自分で拾いにいってくださるんです。フェンスの扉が開いてしまった時には、僕らと一緒になって閉めてくれたこともあります」。ボールボーイのほとんどは大学生。西川以外にもチームを問わずねぎらいの声を掛けてくれる選手はいるというが、広島時代に何度も打率3割以上をマークした“天才打者”の素顔に触れ、一気にファンになったそうだ。

「少なからず応援してくれていると思いますから『ありがとう』という気持ちだけですね」

 西川に尋ねれば「広島時代からやっていますけれど、声を掛ける深い意味はありません。少なからず応援してくれていると思いますから『ありがとう』という気持ちだけですね」。ファウルボールについても「もう普通に『いいよ』ということです。僕がボールを拾いに行った方が早いし、体を動かしていた方が(次のプレーの準備ができて)楽ですからね」と明かす。好守や素早い返球などは、こうした隠れた準備も大きいのだ。

 イケメンでクールな印象が強いが、SNS上では、イニング間の応援歌のリズムに合わせて口ずさむ姿や、チームメートにいたずらを仕掛ける場面などが投稿されたことで意外な一面が知られ、ファンも広がりをみせている。

 フリーエージェントでなじみの薄いパ・リーグに移籍して1年目。試行錯誤を繰り返した打撃も徐々に本来の調子を取り戻し、5月末で打率.220台だった打率も、9月中旬には打率.260台まで引き上げた。

 広島時代は巧みなバットコントロールで安打を量産し、8年間の通算打率は.299を誇る“安打製造機”。それだけにFA移籍後の成績は物足りないとはいえ、本拠地最終戦を終えた9月25日現在でチーム最多の132試合に出場。125安打はチームトップで45打点は森友哉捕手(46打点)に次ぐ2位。10盗塁もトップだ。

「もう割り切って打席に立っています。最初からやれよっていう話なんですが、数字的にも物足りないですし、なんとか取り戻せるように最後まで頑張ります」。卓越したバットコントロールでラストスパートをかける。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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