ハム助っ人の覚醒示す「.275&13.40」 フル出場ならHR王も…MLB時代より増した“積極性”
来日1年目のレイエスは規定打席未達ながら103試合でリーグ2位の25HR
日本ハムのフランミル・レイエス外野手が、規定打席未達ながらリーグ2位となる25本塁打を記録した。MLB時代に若くして長距離砲として活躍したポテンシャルを日本球界でも大いに発揮し、チームの2位躍進の原動力の一人となっている。今回は、レイエスのMLBとNPBにおける球歴に加えて、各種の指標に基づく選手としての特徴を紹介。日米の球界で実績を残してきたレイエス選手の足跡を振り返るとともに、規格外のパワーを持つ助っ人の打撃能力にデータの面から迫っていきたい。(成績は10月5日の試合終了時点)
レイエスは2018年にパドレスでメジャーデビュー。同球団は打者にとって不利となるペトコ・パークを本拠地とすることで知られるが、87試合で打率.280、16本塁打、OPS.838と好成績を記録し、24歳の若さで長距離砲として頭角を現した。2019年にはレギュラーに定着し、99試合に出場した段階で27本塁打、OPS.850。シーズン途中にインディアンス(現ガーディアンズ)へトレード移籍して以降は本塁打のペースが落ちたが、2球団トータルで150試合に出場して37本塁打、81打点、OPS.822と好成績を記録した。
2020年は全60試合の短縮シーズンとなったが、主力として59試合に出場し、打率.275、出塁率.344、9本塁打。2021年には故障の影響で115試合の出場にとどまりながら30本塁打を記録し、キャリア最多の85打点を記録した。OPSも自己最高の.846と優れた数字を残し、世界最高峰の舞台で大いに存在感を放っていた。しかし2021年は不振に陥ってシーズン途中にDFAとなり、同年中に移籍したカブスでも完全復調はならず。復活を期した翌2022年は打率.186とさらなる苦戦を強いられ、シーズン終了後に日本ハムに入団し、自身初となるNPBへの挑戦を選択した。
シーズン序盤はNPBへの適応に苦しみ、4月終了時点で打率.170と低打率にあえいだ。しかし日本球界の水に慣れてからは徐々に本領を発揮し、8月には23試合で8本塁打と大暴れ。打率.403、出塁率.429、長打率.779と圧倒的な活躍を見せ、自身初となる「大樹生命月間MVP賞」に輝く出色のバッティングを披露した。順位争いが佳境を迎える9月も好調な打撃を継続し、21試合で9本塁打、打率.309とハイペースで本塁打を量産。通年でも25本塁打、打率.290、OPS.912と投高打低の環境にあって優秀な成績を残し、9月11日には延長戦に決着をつけるサヨナラ本塁打でチームを勝利に導くなど、MLBでの実績から来るシーズン前の高い期待に応える、見事な打棒を示した。
シーズン30本塁打以上を放った2019年と2021年は、いずれも長打率.510、OPS.820以上を記録していた。好調なシーズンでは、MLBの舞台においても生産性の高い打撃を見せていたことが、これらの数字からも読み取れる。また、長打率から単打の影響を取り除いた、いわば真の長打力を示すとされる「ISO」に関しても、通算の数字が.215と優秀な水準に達していた。とりわけ、2019年と2021年のISOは.260以上と非常に高い数値となっており、まさに破壊力抜群の打撃を見せていた。
さらに、本塁打を1本打つのに必要な打席数を示す「AB/HR」も、MLB通算で17.42と優れた数字を記録。さらに、2019年と2021年はどちらもAB/HRが13点台と、かなりのハイペースで本塁打を量産していた。今季のパ・リーグの本塁打王であるソフトバンク・山川穂高内野手のAB/HRが16.18だったという事実を鑑みても、レイエスのAB/HRの高さがうかがい知れる。
出塁率.348、長打率.564、OPS.912と各種の指標がMLB時代を上回った
打率と出塁率の差を表す、打者の選球眼を示す指標の一つである「IsoD」は、MLB通算で.061という数字に。一般的にIsoDは.070~.080程度あれば合格点とされることが多いだけに、やや低水準である点は否めない。ただし、2020年は.069、2021年は.070と、2年連続で合格点に近い数字を残していた時期もあるだけに、今後の成長に期待したいところだ。また、四球を三振で割って示す、打者としての能力や選球眼を示す「BB/K」という指標は、MLB通算で.271と低い水準にとどまっている。2021年以降の3シーズンはいずれもBB/Kが.300を下回っていることからも、選球眼には課題を抱えていることがうかがえる。
次に、本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を示す、「BABIP」という数字を見ていきたい。この数字は選手個人の実力以上に運に左右されやすい側面が大きい指標であると考えられており、一般的な基準値は.300とされている。また、俊足の左打者は内野安打を稼ぎやすいことからBABIPが比較的高くなりやすく、逆に右打者は不利であると考えられている。そんな中で、レイエスは強打の右打者でありながら、MLB通算で.311と基準値をやや上回る水準のBABIPを記録している。
先述の通り、BABIPの高さは運に恵まれていることを示唆しているのは確かだ。その一方で、俊足の選手だけでなく打球速度が速い打者もBABIPが高くなる傾向にあるとされている。規格外のパワーを持つレイエスのBABIPの高さが、並外れた打球速度に由来している可能性は十分に考えられそうだ。
最後に、2024年にレイエスがNPBで記録した各種の指標について見ていきたい。出塁率.348、長打率.564、OPS.912と各種の指標がMLB時代を上回っており、とりわけ、長打率とOPSは非常に優秀な水準に達している。また、ISOに関しても.275と極めて高く、AB/HRも13.40とMLBでの好調期と同等のレベルにあった。前半戦の不振もあって103試合の出場にとどまったが、フル出場を果たせば本塁打王を狙える可能性も示している。
その一方で、IsoDに関しては.058とMLB時代を下回る数字となっており、より積極的な打撃を見せていたことがうかがえる。BB/Kに関してはMLBにおけるキャリア平均を大きく上回っているだけに、今後は選球眼の改善が見られるかどうかも重要になってきそうだ。さらに、BABIPの数値は.324と、MLB時代と同じく基準値を上回っている点もポイントだ。環境が変化しても同様の傾向が表れている点は、打球速度の影響で安打が増えている可能性を示すものでもある。選球眼と同様に、こちらの指標に関しても今後のキャリアにおける変化に注目する価値は大いにありそうだ。
MLBで若くして2度のシーズン30本塁打を記録したものの、直近2シーズンは苦戦を強いられていたレイエス。NPBにおいて見事にキャリアの立て直しに成功したことは、本人にとっても、新戦力として迎え入れた日本ハムにとっても大きな収穫となったことだろう。これから始まるポストシーズンでも持ち前のパワーと勝負強さを発揮し、チームをさらなる高みへと導くことができるか。シーズン中と同じく、頼れる助っ人が打線の得点力を底上げする役割を果たせば、チームが下克上を果たす可能性も一段と高まってくることだろう。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)