異例の6人胴上げ…富士大から指名続出のワケ 無名投手を発掘した意外な“スカウト先”

指名を受けた富士大・長島幸佑、渡邉悠斗、安徳駿、麦谷祐介、佐藤柳之介、坂本達也(左から)【写真:川浪康太郎】
指名を受けた富士大・長島幸佑、渡邉悠斗、安徳駿、麦谷祐介、佐藤柳之介、坂本達也(左から)【写真:川浪康太郎】

高校時代は無名…鷹ドラ3右腕・富士大の安徳駿は「YouTubeに感謝」

「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が24日、都内で開催され、富士大からはプロ志望届を提出していた7人中6人(支配下4人、育成2人)が指名を受けた。大学の同一チームから6人指名は育成を含む数では史上最多。前代未聞の“6人連続胴上げ”を見つめた安田慎太郎監督は、「この学年が入ってきた時に、しっかりやれば6、7人はプロに進めると感じた。託した思いが今日実ってホッとしています」と胸をなで下ろした。大量指名の背景には、指揮官の鋭い“観察眼”がある。

 今年の大学4年生は、高校3年時の2020年に数々の大会が中止になるなど、新型コロナウイルスの影響を最大限に受けた代。選手がアピールの機会を失うのと同様に、大学の指導者も「選手発掘」に苦心した。富士大は岩手県花巻市に位置しながら、北海道から沖縄まで、日本全国から選手が集まる。例年は安田監督が逸材を追い求めて全国を飛び回るが、この年は移動を制限されたためYouTubeで各地の高校生の動画をチェックしたという。

 そんな中、YouTubeの「おすすめ」に現れたのが、当時久留米商の2年生だった安徳駿投手(ソフトバンク3位)の投球動画だった。福岡大会で投げる安徳の姿を見て、安田監督は「バランスと指先のかかりがいい。球質は間違いないから、球速が140キロ台後半まで上がれば、間違いなく打てない真っすぐになる」と直感した。

 当時の球速は最速136キロ、平均130キロ前後で、高校球界では無名の存在。高校2年秋以降は肘を痛めていた上、久留米商とのつながりも薄かったものの、迷うことなく声をかけた。大学では下半身を中心としたウエートトレーニングやプライオメトリクストレーニングに取り組んで身体能力を上げ、それとともに球速が向上。4年間で最速152キロ、平均140キロ中盤まで伸ばし、安田監督の目論み通り「打てない真っすぐ」が完成した。

 安徳は指名後の取材で、大学で成長した要因の1つに「安田監督がトレーニングの環境を整えてくれたこと」を挙げた。そして「YouTubeの『おすすめ』に動画が流れてきていなかったら、自分はここにいない。YouTubeに感謝です」と白い歯をこぼした。

外野ノック見てプロ“確信”…「ドラ1でいける」の予感的中

 長島幸佑投手(ロッテ育成3位)も、YouTubeの動画がきっかけで興味を持った選手。佐野日大の頃から直球には威力があったため、大学では課題としていた制球力の改善と決め球になるフォークの習得を助言した。

 もちろん、直接目にした選手にも可能性を感じていた。その上で、足りない部分を伸ばすための道筋を示した。

 麦谷祐介外野手がオリックスから1位指名を受けた直後の記者会見では、「名前を呼ばれた瞬間、麦谷を大崎中央(宮城)のグラウンドで初めて見た時のことを走馬燈のように思い出した。外野ノックでイージーなフライを捕る姿を見て、プロに行けると確信しました」と回顧。大学では打撃を徹底的に鍛え、三拍子そろった「ドラ1級」の外野手へと成長させた。

 麦谷は「安田監督の予想は本当に当たる」と舌を巻く。続けて「前に『お前はドラ1でいけるよ』と言っていただいた時に『絶対嘘でしょ』と思ったけど、こうしてこの日にドラフト1位で呼んでもらえた。感謝しています」とはにかんだ。

 佐藤柳之介投手(広島2位)、渡邉悠斗捕手(同4位)、坂本達也捕手(巨人育成1位)も、大学で進化を遂げた。佐藤は走り込みで体力面の課題を克服し、渡邉は長打力を身に付け一塁や三塁の守備にも挑戦したことで可能性を広げた。坂本も打撃を強化して「強肩強打」の捕手と評されるようになった。

 指揮官の導きのもと、プロへの扉をこじ開けた6人。安田監督は「まだ始まり。これからプロで長くやれるように頑張ってほしい」と期待を込めた。

【実際の動画】前代未聞の6人胴上げ…富士大で“異例の光景”

RECOMMEND

CATEGORY