DeNAが3連勝しても「初めて五分」 鷹有利の形成は変わらず…専門家が予想する理由
鷹に控える有原&モイネロの先発2枚…DeNAにとっては「脅威です」
■DeNA 5ー0 ソフトバンク(30日・みずほPayPayドーム)
DeNAはソフトバンクとの日本シリーズに2連敗の後、2連勝。2勝2敗のタイで、31日に敵地・みずほPayPayドームで第5戦に臨む。上げ潮のDeNAだが、現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「仮にDeNAが第5戦に勝ち日本一に王手をかけたとしても、そこで初めて五分。もしくは、それでもソフトバンクが若干有利かもしれない」と見る。そのワケは──。
30日の第4戦。DeNA打線は4回、タイラー・オースティン内野手がソフトバンク先発の石川柊太投手から右翼席へソロアーチを放ち先制した。7回には2番手の尾形崇斗投手、3番手の岩井俊介投手を攻め一挙4得点。投手陣は先発アンソニー・ケイ投手以下3投手が無失点リレーを演じ、5-0の快勝を収めた。
野口氏は「ソフトバンクの先発投手陣は、第1戦に先発した有原(航平投手)、第2戦の(リバン・)モイネロ(投手)に比べると、第3戦のスチュワート・ジュニア(投手)、第4戦の石川を長いイニング引っ張ることができない」と指摘。「DeNAはエース級2人にやられ、相手の先発投手2人のレベルが少し落ちたところで、中継ぎ陣を打ち崩して勝った形です」と振り返る。
「第5戦の勝敗に関わらず、DeNAは(第6戦以降が行われる)本拠地の横浜スタジアムへ戻ることが決まりました。しかし、第6戦に有原、第7戦にモイネロが、中6日の万全の状態で控えていることは脅威です」。日本シリーズ全体の流れがDeNAに傾いたとは言えないと見ている。
第1戦で有原、甲斐拓也捕手のバッテリーに打撃を狂わされたままなのが、キャプテンの牧秀悟内野手だ。巨人とのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージでは最終第6戦で、同点の9回に大殊勲の決勝打を放ったが、日本シリーズに入ってからは第4戦終了時点で打率.118(17打数2安打)と振るわない。
第1戦で牧の内角を徹底して攻めた有原&甲斐
「牧は第1戦で有原、甲斐のバッテリーに徹底して内角を攻められました」と野口氏。確かに、有原は牧を第1戦の第1打席で空振り三振に仕留めたが、初球から4球連続で内角をえぐるツーシームを投じ、最後にワンバウンドのフォークを振らせた。第2打席では遊ゴロに打ち取ったものの5球中4球がツーシームだった。牧は第1戦で有原に3打席抑えられ、結局5打数無安打に終わっている。
「牧は初っ端に内角を相当意識させられました。内角を打ちにいこうとすると、体がどんどん開いていき、今度は低めのボールゾーンの変化球に対してバットが止まらなくなる」と説明。「第4戦の第4打席で、ワンバウンドのスプリットを2度も振らされて三振しましたが、レギュラーシーズンでは、選球眼のいい牧のあんな姿は見たことがありません」と語った。
野口氏によると、経験豊富な甲斐は2019年の巨人との日本シリーズでは坂本勇人内野手、翌2020年の同じ巨人との対戦では岡本和真内野手の内角を徹底的に攻め、いずれも4勝0敗での日本一に結びつけた。最初に相手のキーマンを封じておくことは、短期決戦を制するための“鉄則”といえる。
DeNA打線では、1番を打つ桑原将志外野手がシリーズ打率.421と絶好調。オースティンの勝負強さは相変わらずで、当たりが出ていなかった宮崎敏郎内野手も、第4戦の7回にソロアーチを放った。あとは牧と、シリーズ打率.154(13打数2安打)の佐野恵太外野手の“復調待ち”とも言える。
「それに、左太ももに故障を抱えながら第3戦でソフトバンク打線を抑えたDeNAの東(克樹投手)が、第7戦の先発にスタンバイできるか。先発できたとしても、普段通りの投球ができるのかが、DeNAにとって鍵になりそうです」と野口氏。「3勝3敗で第7戦にもつれ込み、東とモイネロで最終決戦となれば、見ている方にとっては面白いですね」とうなずく。日本一の行方はまだまだ見えない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)