貧打の中日で「18勝してもおかしくない」 名伯楽が期待する22歳…指摘した“改善点”

中日・高橋宏斗【写真:イワモトアキト】
中日・高橋宏斗【写真:イワモトアキト】

名伯楽・佐藤義則氏が分析…中日・高橋宏が習得したい“横の変化”

 NPBで昨年、特に躍進を遂げた投手の1人が中日・高橋宏斗投手だろう。防御率1.38で自身初タイトルを獲得し、21試合に登板(全て先発)して12勝4敗と抜群の成績を残した。それでも、底知れないポテンシャルを秘める22歳の右腕に対して、「まだまだ伸びしろは大きい。直すべきところを直せば、もっと勝てる」との声もある。そう指摘するのは、投手コーチとしてダルビッシュ有投手(現パドレス)、田中将大投手(現巨人)らを育て、名伯楽と称された野球評論家・佐藤義則氏だ。

「高橋宏はもっと変化球を投げられるのに、投げずに打たれるケースがある。ストレートとスプリットは確かに一級品で、特に2ストライク後にはスプリットの割合が増えますが、試合の終盤に空振りを取れなくなり、球数が増えて打たれることがありました。先発投手はもっといろいろな球種を投げるべきだし、そうすれば、もっと勝てると思います」

 高橋宏はストレートとスプリットの2種類で、全投球の約8割を占める。他にカットボール、カーブがあり、過去にツーシーム、スライダーなどを投げていたこともあったが、影が薄い。

「立ち上がりにカットボール、カーブでストライクが入らないと、捕手もサインを出さなくなる。その気持ちは理解できますが、球種がほぼ2種類となれば、打者は狙いを絞りやすくなります。とびきりのストレートも、長いイニングを投げていくうちにはスピードが落ちていきますから、なおさらとらえやすくなるのです」と佐藤氏。「そこで球種が2種類から3種類に増えれば、打者側は考えなければならないことが増える。特に、ストレートかスプリットの可能性が高い高橋宏に“横の変化”が加われば、打者は心底嫌がるでしょう」と説明する。

「打者側がマークしなければならない球種を増やすという意味で、ストライクが入らない球種も辛抱強く、ある程度投げておくことが大切です。“投げているうちに良くなっていく”こともありますから、試合序盤の比較的余裕のある場面で数多く投げておくべきでしょう」とも付け加えた。

才木はスライダーの割合を増やして8勝→13勝

「ストレートとフォークの2種類主体から、昨年スライダーの割合を増やして成功したのが、阪神の才木(浩人投手)ですよ」。佐藤氏は一昨年の19試合8勝5敗から、昨年25試合13勝3敗へジャンプアップした26歳の右腕を引き合いに出す。

「高橋宏も才木も、昨年は打線の援護に恵まれずに勝てない試合があった。打線の奮起次第で、17~18勝してもおかしくないと思います」とも。昨年の援護率(登板中に味方打線が挙げた9イニングあたりの得点)は、高橋宏が2.92、才木が2.71で、巨人・菅野智之投手の3.48、DeNA・東克樹投手の3.63などに比べ、厳しい状況にあったのは事実だ。

 高橋宏も才木も、これから“脂の乗り切る時期”を迎える。来年3月の第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)や2028年ロサンゼルス五輪で、日本のエースとして名乗りを上げてほしい人材だ。名伯楽も、さらなる飛躍に期待を寄せている。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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