“大谷本”の出版は即却下、繋がらない電話 知り合って10年超…水原一平被告の異変
法廷で用意したメモを“ボー読み”「ミスター・オオタニには申し訳なく思っている」
ここまで人間は変わるものか。銀行詐欺罪などに問われた水原一平被告は6日(日本時間7日)、カリフォルニア州の連邦地裁で禁錮4年9か月を言い渡された。量刑の言い渡し前にはジョン・ホルコム判事から発言を促され、用意したメモ書きを“ボー読み”。「ミスター・オオタニには本当に申し訳なく思っている。結果を受け入れる覚悟は出来ている」。40分前に到着した法廷ではずっと前を向いたままで感情を読み取ることは出来なかった。まるで血が通ってないかのようだった。
いつからこんな人間になったか。「ん?」と首を傾げたくなったのは2021年オフ。大谷翔平が9勝&46本塁打と二刀流で躍動し、初めてMVPに輝いた年。当時の水原通訳にシーズン中から取材依頼を出していた。大谷事務所からもOKをもらい、あとはインタビュー日の設定。「インタビューですが、今日とかどうですか? 急なので難しそうでしたら後日でも大丈夫です」とメッセージがあった。
その日は別件の取材があり、数日後に設定したが、その日は何度電話しても繋がらない。1時間おきに3、4回にわたって入電したが、全く電話に出なかった。今思えば、違法賭博にのめり込んでいた時期と合致する。メディア関係者や古巣・日本ハムの関係者間でも「一平は全く電話に出ない」は有名だったが、同じくインタビュー依頼をした2022年オフも同じ。インタビュー設定日に数回に渡って連絡を入れたが、折り返しは全くなかった。
何か気に障るようなことをしたか――。ただ、日頃の現場では普通にコミュニケーションを取る間柄だ。喫煙所で日本ハム通訳時代の裏話、何より間近で見る大谷の凄さを力説していた。徐々に喫煙所でのトークも減り、水原通訳は電話をするばかりに。その時は「大谷を支えるのは大変なんだろうな」と思っていたが、今思えば、違法賭博に手を染めていたということだろう。
記者が最初に人間・水原一平を知ったのは、日本ハム通訳だった2015年。ナイターの西武戦後、立川市内の焼肉屋で卓を囲んだ。物静かな男で選手との会話にはほとんど入らなかったが、外国人選手から愛される気配り。「どうぞ食べてください」。牛タン、カルビの焼き加減は完璧で、さすが料理人を父に持つ男だと思ったものだ。
深夜3時までの会食にも嫌な顔一つしなかったと記憶している。翌日には「昨日はありがとうございました」。メディア関係者にも頭を下げていたのも印象的だった。日頃からメディア関係者へのサービス精神も。「ちょっとレアードを取材させて欲しいんだけど」。わざわざロッカーで助っ人のコメントを聞いてきてくれた。そんな心優しい「一平ちゃん」だったのに……。
水原被告には大谷への賠償金として1700万ドル(約26億円)もの支払いが言い渡された。余談ではあるが、2022年に本の執筆依頼が来ていることを水原被告に伝えたが、「僕は翔平を陰から支えたいので。翔平に迷惑をかけたくない」と即却下された。その時とは明らかに立場も違う。巨額の賠償金をどうやって支払っていくのだろうか。