賢くないと「生き残れない」 広島の“スター”が迎える正念場…専門家苦言「定着できない理由」
![春季キャンプで練習する広島・中村奨成【写真:宮脇広久】](https://full-count.jp/wp-content/uploads/2025/02/12210233/20250212_nakamura_mh.jpg)
野球評論家・野口寿浩氏、広島の中村奨成は「打たなければ生き残れない」
鳴り物入りでプロの門を叩いた未完の大器も、いよいよ崖っぷちか。広島・広陵高3年時に夏の甲子園で大会記録を更新する6本塁打を放ち、2017年ドラフト1位で地元球団の広島に入団した中村奨成外野手。今年でプロ8年目を迎え、6月には26歳となるが1軍定着にはほど遠く、いまだ通算2本塁打、11打点に過ぎないのが現実だ。覚醒のためのポイントは何か。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が指摘する。
中村奨は昨年、ウエスタン・リーグではチーム最多の8本塁打を放ち、打率.278をマークした。しかし、1軍に上がると結果が出ない。昨年も30試合に出場したが69打数10安打の打率.145、0本塁打、1打点という寂しい数字に終わった。
広島は11日に宮崎・日南での1次キャンプを打ち上げ、13日から沖縄で2次キャンプを行う。野口氏は10日に日南で行われた紅白戦を視察していた。中村奨はこの試合に、紅組の「3番・DH」で出場した。
初回、紅組の攻撃。1番の羽月隆太郎内野手が四球で出塁するも、2番の大盛穂外野手はあえなく遊ゴロ併殺に倒れる。続く中村奨は初球を打ち上げ、左飛に終わった。野口氏は「厳しいようですが『1軍に定着できない理由は、そういうところだぞ』と言いたくなります」と苦言を呈した。
「プレーボールとともに、せっかく四球で走者を出したのに、次打者がゲッツー。試合の流れにとって、こういう時に3番打者が出塁できるかどうかは非常に重要です。そこで中村奨は、初球を簡単に打ち上げてしまった。本来なら、確実に打てる球を見逃したとしても、首脳陣は『四球でも何でも出塁しようとしている』と選手の意図を感じ、納得するところです。打つなら確実にとらえなければならない。外野手が前進して捕球するようなフライを打ち上げてしまっては、チームのムードが確実に悪くなります」
どこでも守れる二俣、侍ジャパンに抜擢された田村ら若手が次々台頭
中村奨が考えなくてはならないのは、目の前の試合の流れだけではない。野口氏は「中村奨は、打たなければ生き残れない立場です。そういう中で、どう結果を出すか。というよりも、まずチームが自分に何を求めているかを理解することが先決です。ホームランを打ってほしいのか、出塁してほしいのか、走者を返してほしいのか……。もちろんシチュエーションによっても変わりますが、まず自分がどういうタイプの選手と見られていてるのかを把握し、そこへ向かって練習しなければいけません」と指摘する。
さらには「わからなかったら、首脳陣に聞けばいいのです。中村奨は技術に関しては、物凄く突き詰めて練習していると思います。しかし、そもそも技術のない選手は1軍に呼ばれないわけで、どこで差ができるのかというと、考えてやっているかどうかです。漠然とバットを振っているだけでは、1軍で活躍することはできません」と強調するのだった。
チームでは、中村奨より年下の選手も台頭しつつある。前出の紅白戦では、白組の「3番・遊撃」で出場した22歳の二俣翔一内野手が、7回に左翼ポール際へ2ランを放った。野口氏は「僕が“激推し”しているのが、この二俣です。足が速くて、肩が強くて、打撃は超積極的で2年前にウエスタン・リーグの最多安打を記録しました。捕手としてプロ入りしましたが、今は内外野どこでも守れます」と称賛する。
また、白組の久保修外野手は、中堅守備で何度も目を見張らせた。「新井貴浩監督が『外野守備はウチで1番上手い。これで打てるようになれば、即レギュラーです』と言い切る素材です」と野口氏。田村俊介外野手は、昨年3月の「日本vs欧州代表」で侍ジャパンのトップチームに抜擢された逸材だ。一方、ドラフト1位ルーキーの佐々木泰内野手は、昨秋に左肩を脱臼した影響を考慮され、キャンプは2軍スタートとなった。野口氏は「首脳陣は無理をさせない方針ですが、長打力は魅力です」と評価している。
今年の広島は、菊池涼介内野手、田中広輔内野手、秋山翔吾外野手らベテラン陣を、若手が激しく突き上げる構図。それがチーム力アップにつながる。中村奨も乗り遅れてはいられない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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