打ち取った大谷翔平は「世界的な存在だよ」 翌日の行動に感激…変則左腕の逆転人生

Dバックスのカイル・バックハス【写真:上野明洸】
Dバックスのカイル・バックハス【写真:上野明洸】

2021年のドラフトで指名漏れ…ドラフト外から這い上がった27歳の変則左腕

 指名漏れから、存在感を高める変則左腕がいる。ダイヤモンドバックスのカイル・バックハス投手は、27歳の今季メジャーデビュー。29日(日本時間30日)の敵地ドジャース戦では、大谷らを3者凡退に抑える好投を披露した。身長193センチのサイドハンド左腕は、“左キラー”として、シンデレラストーリーを歩もうとしている。

 2021年のドラフトでは計612人が指名されたが、名前は呼ばれず無念の指名漏れ。それでも、可能性を見出したダイヤモンドバックスが左腕に声をかけ、ドラフト外で契約を結んだ。

「大学ではいい投球ができたし、アリゾナと契約できるチャンスをもらえたので、かなり嬉しかった。そこから挑戦してみようと思って、今ここにいるんだ」

 2021年は1Aで先発として登板していたが、2年目にリリーフに転向したことをきっかけにスリークォーターからサイドスローにフォームを変更。「自分のことを(他の選手と)差別化させてくれた(のがサイドスロー)。自分は速球派じゃないから、角度を下げれば左打者をだいぶ手こずらせることができるから、それが(投げ方を変えた)経緯だよ」。奪三振率は前年の8.3から13.4に急増。昨年は故障したこともありマイナーで過ごしたが、今季ついに昇格となった。

 球種は主体とするシンカーに加え、一塁側に浮きながら逃げるチェンジアップ、三塁側に曲がるスイーパーの3球種のみ。29日(同30日)終了時点では28試合に登板して防御率3.80。右打者は苦手としているものの、左打者は被打率.125(32打数4安打)と抑え込んでいる。

 2021年にダイヤモンドバックスが指名した21人から漏れたバックハスだが、今や同年1巡目指名のロウラー、2巡目のデル・カスティーヨとともにメジャーの舞台でプレー。「(昇格したときは)うれしかったよ。指名されなくて、マイナーでやってきた道のりは簡単ではなかったけど、楽しみながらできたからね。そして今、ナ・リーグ西地区でショウヘイや他の選手たちと対戦できていることは、なかなかクールだね」。

 30日(同31日)の試合前には、打撃練習を左翼のポジションで見守っており、後ろでキャッチボールを行った大谷とはグータッチを交わす場面があった。「とてもクールな瞬間だった。彼は世界的な存在で、誰もが知っているからね。彼とフィールドをともにするのは栄誉なことだと思う。僕の中では彼がMLB史上最高の選手だと思っているから、これから20年、30年経って振り返った時に、そんな彼と対戦することができて、1度アウトを奪うことができたとんだと言えるときは、かなり粋なことだと思う」とニコリと笑った。

 左打者を苦しめる“変則左腕”は、これからどんな物語を描くのか。挑戦はまだ始まったばかりだ。

(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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