“想定外”の選出に「え、まじ?」 甲子園出場無し、5か月前までベンチ外も…届いた吉報

U18日本代表に選出された神戸国際大付・川口蒼旺【写真:加治屋友輝】
U18日本代表に選出された神戸国際大付・川口蒼旺【写真:加治屋友輝】

U-18川口は3年春に初めて背番号を貰った

「ラグザス presents 第32回 WBSC U-18 野球ワールドカップ」に出場する侍ジャパンU-18日本代表。甲子園で活躍した選手たちが名を連ねる中で“異色”の経歴を持つ選手がいる。神戸国際大付から選出された川口蒼旺(あお)外野手は、約5か月前まで公式戦に出場したことがない選手だった。

 名門のリードオフマンを任されてきた。神戸国際大付では「1番・左翼」を務めた川口。高校通算本塁打数は6本ながら、身長183センチ、体重79キロの恵まれた体格を活かし、50メートル走は5.8秒を誇る身体能力の高い選手だ。夏の兵庫県大会では準々決勝で報徳学園に敗れたものの、本塁打を放つなど強烈なインパクトを残した。

 ここまでU-18の壮行試合では2試合ともに「8番・指名打者」でスタメン出場したものの未だ無安打に終わっている。それでも練習のたびに「感覚も良くなってきています」と自信をのぞかせる。

 一見、名門校から選ばれたエリート選手のように見えるが、実は順風満帆な高校生活ではなかった。「3年生の春季大会に初めて背番号をもらいました」と語る通り、3年生になるまで1度も公式戦に出場したことは無かった。1年生の冬に右肩を怪我し、手術を余儀なくされた。それから2年秋の終わりまでリハビリを繰り返し練習ではサポート役に回っていた。

 それでも、1度も諦めることなく努力を惜しまなかった。「これまでは守備や足の速さには自信があったんですが、バッティングが課題で」と、課題克服のためにリハビリ期間を利用して10キロ近く増量。怪我が治り、ひと冬越した頃には飛距離も出るようになった。

夏の大会後に届いた日本代表の知らせ「え、まじ?」

 苦しかった怪我の時期を乗り越え、春季大会でついに背番号「7」を獲得。チームの核として懸命に戦ったが甲子園には届かなかった。だからこそ、日本代表からの選出には目を丸くした。夏の県大会に敗れた2週間後、コーチから突然「U-18の候補に入っているぞ!」と報告を受けた。

 これまで代表合宿にすら呼ばれたことがなかった川口は「びっくりしました。え、まじ? という感覚でした。両親も驚いていましたね」と嬉しさ以上に驚くばかりだったと振り返る。それでも「だんだん時間が経つにつれて実感も湧いてきました」と晴れの舞台に意気込んだ。

 周りは甲子園のスターばかり。圧倒的な経験不足を感じることも少なくないが、それがむしろ燃えてくるタイプだ。「すごい選手ばかりですが、負けていられないです」と力を込める。公式戦の経験が少ないからこそ、一日一日成長を感じる日々。出遅れた高校野球生活を取り戻すように加速し続ける。

(木村竜也 / Tatsuya Kimura)

RECOMMEND

CATEGORY