日本人投手は「ヤバすぎ」 元助っ人が“初体験”に四苦八苦…遅すぎた対応策「もっと早く」

日本ハム・伊藤大海投手は「球種を自由自在に操る」…マキノンの証言
2023年に西武へ入団したデビッド・マキノン氏は来日当初、日本人投手特有の攻めに苦しんだ。幼少期は地元のレッドソックスファンとして野茂英雄氏の投球をよく見ていたこともあり、レベルの高さは覚悟していた。しかし開幕から調子が上がらず、苦肉の策でアプローチを変えたことで転機が訪れた。
来日前にMLBで活躍していた日本人投手を目の当たりにしたマキノン氏は「トップ層の選手はとてもいい選手だと知っていました。レッドソックスファンだったので、ヒデオ・ノモの投球もよく見ていました」と、来日前から日本人投手のレベルはある程度理解していた。しかし、想定外だったのは「全ての投手がとても印象に残る」ほど好投手だったこと。「3つの球種を(自由に)操ることができるのです。例えば、同じカットボールでも、変化量や方向を変えたりすることができます。ヤバすぎです。彼らは球を操ることに非常に長けています」と、繊細な制球力に驚いたという。
「彼らは、ストライクゾーンを外すことも非常に長けています。(球審の特徴を生かして)ゾーンを突いてきたり、ボール球を振らせにきます。ずっとストライクに見えていたのに、最後はそうじゃないんです!」と、打者との駆け引きにも難しさを感じたという。驚いたのは制球力だけでなかった。「タイミングもずらしてきます。スライドステップ、2段モーションをしてきます」。米国では今まであまり見たことのないようなタイプの投手に四苦八苦した。
マキノン氏の“天敵”だったのは日本ハム・伊藤大海投手。通算打率.143、本塁打0、3三振に抑えられた伊藤について「球種を自由自在に操るのが最も長けていた投手で印象に残っています。ボン、ボン、ボン、ボン! って感じでした! 自由自在に投げていましたね」と、笑いながら振り返った。
アプローチ変更で「対応できる球が増えた」
好投手が勢揃いする日本でマキノン氏は、来日当初ストライクゾーンに「とても苦しみました」と、吐露した。加えて、オープン戦はマキノン氏が得意な速球主体で攻めてきたが、開幕して変化球主体に配球が変わったことも日本野球への適応を遅らせた。しかも「ほとんどの投手は球種を5つも持っているんですよ!」と、半ばお手上げ状態だった。
しかも、8月下旬に肩の怪我で抹消された。しかし、復帰した9月中旬にアプローチを変更したことで転機が訪れた。「タイミングを2番目に速い球種に合わせたんです。1番速い球種に合わせてしまうと、非常に遅い球種には対応できなくなってしまうのです。例えば、ある投手の最速の球種が150キロだとすれば、タイミングを138キロの球種に設定するんです。そうすれば、150キロの球が来て振り遅れても、ライト方向に打てます。138キロの球が来たら、センター方向に打ち返すことができます。それより遅い球が来れば、レフト方向に打つという感じです。対応できる球が増えましたね」。
開幕から怪我で離脱するまで112試合に出場し打率.249、12本塁打、41打点。復帰後は打率.340、3本塁打、9打点。そのことについて聞かれたマキノン氏は「そうですね! もっと早く気が付くべきでした! 不振だった6月初旬とかだったら良かったんですが! もっと言うと、全く打てていなかった交流戦前に気が付くべきでした!」と、笑い飛ばした。怪我をしたタイミングがもう少し早ければ……。もしかしたら、違う運命だったのかもしれない。
(増井貴志/Takashi Masui)