111試合で100盗塁の脅威…ド軍マイナーに眠る“金の卵” こじ開けた歴史の扉

ド軍有望株のジョージが過去20年で4人目のマイナー100盗塁を達成
ドジャースがポストシーズンを前に苦しい戦いを強いられる中、マイナーに眩い存在感を放つ若き外野手がいる。球団有望株ランキング25位に位置するケンダル・ジョージ外野手だ。20歳の逸材は今季1A+の111試合で驚異の100盗塁をマーク。直近5試合で15盗塁。マイナーとはいえ、その“異能”ぶりは歴史的な水準となっている。
2023年ドラフト全体36位指名でドジャースに入団。米球界で広く用いられる「20-80評価」(20が最低、80が最高)で、当時からスカウトが「90グレードのスピード」と冗談交じりに評したほどの俊足を誇る。今季は盗塁技術の成長が目覚ましく、昨季は1Aでは48試行36成功(成功率75%)にとどまったが、今季は125回の試行で101回成功と、成功率を80.8%まで引き上げている。
特筆すべきは直近の勢いだ。8月以降の28試合で43盗塁を量産。直近5試合では3、3、2、3、4と合計15盗塁を決め、5試合スパンでこれほどの数字を残した選手はMLBの歴史にも存在しないという。8月だけで34盗塁。通算12度の盗塁王を獲得し、歴代最多1406盗塁のリッキー・ヘンダーソンでも月間最多は33。舞台が違うとはいえ、やはりその記録は群を抜いている。
また、今季は「1試合3盗塁以上」をすでに14度達成。こちらも1983年にヘンダーソンが残したメジャー記録(12度)を上回る数字であり、MLB全体でも今季12度しか出ていない記録を1人で超えている。
ジョージの101盗塁は2005年以降のマイナーで全体5位にランクイン。残り3試合で3盗塁を決めれば、歴代2位タイとなる。過去20年間でシーズン100盗塁以上を記録したのは、ビリー・ハミルトン(2011、12年)、デライノ・デシールズJr.(2012年)、チャンドラー・シンプソン(2024年)だけ。MLB全体でも100盗塁は歴史上わずか8度しかなく、最後に達成したのは1987年のビンス・コールマン(109盗塁)まで遡る。21世紀最多がホセ・レイエスの78盗塁(2007年)であることを考えても、ジョージの走りは時代を超えた快挙と言える。
今季の飛躍に関して、「恐れず挑戦して、自分にはできると信じること。それがすべてだった」とジョージは語る。「下を向いて、とにかく走り続けた」。一方で「無謀に走らないことを学んだ。盗塁にはテクニックが必要。もちろん自分のスピードが助けになるけどね」とも明かす。野性味あふれるスピードに、冷静な技術習得が加わったことが、この驚異的な進化を支えている。
ドジャースの今季チーム全体での盗塁数は78で、30球団中21位となっている。昨季は大谷翔平投手が59盗塁を記録したこともあり、136個で10位だったが減少傾向にある。1A+で打率.295、OPS.779とまだ打撃に課題を残すジョージだが、“一芸”を武器にビッグリーグで旋風を巻き起こす日が来るかもしれない。
(Full-Count編集部)