大谷翔平の打撃に感じた“異変” 専門家が指摘…安打にあったズレ「どちらに転ぶか」

「左腕と対戦した3打席は全てボール球に手を出した結果」
【MLB】オリオールズ 4ー3 ドジャース(日本時間7日・ボルティモア)
ドジャースは6日(日本時間7日)、敵地で行われたオリオールズ戦で衝撃的な逆転サヨナラ負けで5連敗を喫した。ナ・リーグ西地区首位も2位のパドレスに1ゲーム差と肉薄された。今季のレギュラーシーズンは残り20試合。大谷翔平投手は窮地のチームの救世主となれるだろうか。現役時代にNPB通算2038安打をマークし、MLBにも造詣の深い野球評論家・新井宏昌氏が分析する。
3-0とリードして9回を迎え、連敗ストップは間違いなしと思われたドジャース。先発の山本由伸投手が無安打2四球のまま2死を取り、ノーヒットノーラン達成まであと1人と迫っていたところでソロを被弾。山本の後を継いだリリーフ陣もあれよあれよという間に逆転され、まさかのサヨナラ負けを喫したのだった。
敗戦直後には、ベンチ内で山本と並んで厳しい表情を浮かべる大谷の姿があった。この日、大谷は5打数1安打1打点。「大谷の打撃には、少し疲れを感じました。いいスイングをしているように見えますが、感覚が少しずれている。残り試合とポストシーズンは、心身ともに疲労との戦いになると思います」。と新井氏は語る。
初回の第1打席では、左腕トレーバー・ロジャーズ投手と対戦。カウント3-2から内角高めの151キロのシンカーにやや詰まらされながらも、右前に運んだ。
だが、新井氏は「打ったのはボール球。左腕のロジャーズに対してはこの日、3回1死二、三塁で遊ゴロを転がし先制点をものにした第2打席も、5回1死二、三塁の好機で空振り三振に倒れた第3打席も、全てボール球に手を出した結果でした」と微妙な“感覚のずれ”を指摘する。
「打者は相手投手に合わせて受動的・瞬間的に対応しなければならない」
7回無死一塁での第4打席は、右腕アルバート・スアレス投手が外角高めに投じた149キロのストレートをとらえ、痛烈な当たりの左直だったが、これも新井氏は「少しだけタイミングがずれていたために、会心の当たりに至らなかった」と見た。
無理もない。大谷は前日(5日)にはタイラー・グラスノー投手の登板回避をうけ、緊急先発して3回2/3を無失点に封じたばかり。もともと投打二刀流をこなしている上、シーズン最終盤の勝負所にきて、大谷にかかる負担がさらに重くなっている。
「ドジャース打線は全体的に、調子の出ている選手が少ないのが現状。チームとしては大谷にやってもらわないと困りますし、大谷本人も気力を振り絞って期待に応えようとするでしょうが、疲労との戦いがどちらに転ぶかわからない状況です」と新井氏は心配する。チーム内外から「ユニコーン」と呼ばれる大谷も、人間には違いない。
ナ・リーグ本塁打王争いでも、トップを走るフィリーズのカイル・シュワバー外野手に3本差をつけられているのが現状。ここからまた大谷が超人的な“まくり”が見られるか。「疲労は投打両方に影響を与えますが、どちらかといえば、投手としては自分のリズムで投げられる分、まだしも修正がしやすいいのではないか。打者は相手投手に合わせて受動的・瞬間的に対応しなければならないので、なおさら疲労の影響が大きく出ると思います」。新井氏も少し心配そうな表情を浮かべていた。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)