史上初快挙も射程圏…ロッテドラ1が見せる進化 プロ初HRが示した“.308”の強み

ロッテ・西川史礁【写真:小林靖】
ロッテ・西川史礁【写真:小林靖】

ロッテのドラフト1位・西川史礁は変化球対応力が急成長

 2024年のドラフト1位でロッテに入団した西川史礁外野手。即戦力の期待を背負ってプロの世界に入った注目のルーキーは、オープン戦打率.410と結果を残し、開幕戦は「1番・左翼」でスタメン出場。5試合連続安打を記録する好スタートを切ったものの、その後は19打席連続ノーヒットを経験するなどプロの高い壁にぶつかった。それでも、2度の登録抹消を経て1軍に戻ってきた6月13日以降は打率.328をマーク。2球団競合ドラフト1位にふさわしい活躍を見せている。今回は、6月以降に西川の打撃成績が急上昇した要因を探っていきたい。

 西川は2軍調整時にサブローヘッドコーチ(当時2軍監督)から助言を受け、これまでよりミートポイントを捕手寄りに修正した。ボールを引きつけて打つようになったことで改善されたのが、ボール球になる変化球の見極めだ。5月までは変化球のボールゾーンスイング率が62.0%と非常に高かったが、6月以降は41.3%に低下。対してストライクゾーンのスイング率はどちらの期間も60%台となっており、ストライクゾーン判定の精度が大きく向上していることが分かる。

 次に変化球をスイングした際の結果に注目したい。6月以降は変化球に対して空振りとファウルが減り、インプレー打球が増加。端的にいえば変化球の打ち損じが減ったということで、これにはボール球に手を出さなくなったことが少なからず関係しているだろう。さらに前に飛んだ打球はライナーやフライが増えており、以前よりもしっかりと変化球を捉え、角度のついた打球を放つことができるようになっている。

 上記のようなアプローチの変化は打撃成績の向上につながっており、6月以降は変化球打率.340をマーク。これは同期間のリーグ平均.241よりも1割近く高い数値となっている。また、二塁打を中心とした長打が多いことも注目に値する。現在リーグ3位タイの22二塁打を記録しているが、そのうち14本は6月以降に変化球をはじき返して生み出したものだ。

 さらに、6月以降に記録している2ストライク打率.308は、期間中に200打席以上立っている打者の中でリーグトップ。同条件で変化球に対して記録した安打数もリーグ最多を数える。変化球への対応力がアップした西川は、投手が勝負球を投じてくる2ストライク時でも自分の打撃を崩すことなく打ち返せるようになっており、追い込まれた後に見せる打撃はリーグを代表する打者に比肩するハイレベルなものといえる。その好例が7月30日の楽天戦でプロ初本塁打を放った打席だろう。フルカウントから6球をファウルで粘った後、岸孝之投手のスライダーをZOZOマリンのホームランラグーンにたたき込んだこの打席は、彼の成長を示す象徴的なシーンだ。

 2軍での打撃改造が功を奏し、6月以降はまさに快進撃といえる活躍を見せている。現時点で規定打席には達していないものの、8月途中からは2番での出場を続けており、1年目での規定打席クリアは十分に射程圏内だ。パ・リーグの大卒1年目野手としては56年ぶりとなる新人王を狙えることに加え、史上初のルーキー首位打者という偉業にも手が届く可能性があり、今後のさらなる活躍に期待が高まる。チームとしては苦しい戦いが続くロッテに燦然と輝くゴールデンルーキーが、シーズンの終わりに見る景色はどのようなものになるのだろうか。

(「パ・リーグ インサイト」データスタジアム編集部)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY