育成から“復活”した西武の大砲候補 昇格即故障も…2軍指揮官が太鼓判「良い経験」

「どの方向へもホームランを打てる」…2軍監督が絶賛するパワー
西武は長距離砲の“出現”を渇望している。球団ワースト記録の91敗を喫した昨季に比べると、今季は残り13試合で57勝68敗3分で5位と前進はしているが、チーム打率.233、362得点はリーグワーストで相変わらず攻撃力が課題(成績は17日現在)。かつては浅村栄斗内野手(楽天)、森友哉捕手(オリックス)、山川穂高内野手(ソフトバンク)らが在籍して“山賊打線”の異名で恐れられたが、相次いでFA移籍で流出。いまや見る影もない。
そんな西武の次代を担うスラッガー候補の筆頭格が、5年目の仲三河(なかみがわ)優太外野手である。180センチ、100キロの堂々たる体格を誇る左打ちの長距離砲は、今年7月10日に再びの支配下選手登録を勝ち取り、即1軍デビューして大活躍。ところが、右手有鈎(ゆうこう)骨骨折に見舞われ、わずか5試合の出場で登録を抹消された。それでも、わずか約1か月半で実戦復帰を果たし1軍再昇格を狙っている。
「ライトからレフトまで、どの方向へもホームランを打てるパワーを持っています。ベルーナドームで行われた2軍戦で、“逆方向”の左中間席へライナーで放り込んだことがあります」。仲三河を評するのは、小関竜也2軍監督だ。「とりあえず、技術は今のままでいい。あとは1軍の投手のスピード、変化球の切れに、どう対応していくかだけだと思います」と力量を認めている。
仲三河は2020年のドラフト7位で大阪桐蔭高から西武に入団。当初から「あいつの飛距離はエグイ」(渡邉勇太朗投手)と評判だった。しかし、1軍出場のチャンスを掴めないまま、2023年オフには戦力外通告を受け、育成選手として再契約した。
今春のキャンプでは、グリップを胸付近の低い位置に置いて構え、コンパクトなスイングで捉えるフォームに変更。それでも持ち味の長打力は変わらず、イースタン・リーグでは4月15日の日本ハム戦で1試合3本塁打、5月29日のオイシックス戦でサイクル安打達成と猛アピールし、支配下選手登録の復帰を勝ち取った。

「1軍では少ないとはいえ、良い経験を積めた」
1軍昇格した7月10日の楽天戦。代打でプロ初打席に立つと、右前適時打を放ち、初安打と初打点をマーク。同12日のロッテ戦では「3番・指名打者」で初先発し、先制犠飛と満塁から走者一掃の3点三塁打で4打点を挙げ、そのままレギュラー獲得に突き進むかと思われた。ただ、同14日の日本ハム戦で右手有鈎骨を骨折し、戦線離脱を余儀なくされたのだった。
今も右の手のひらには、生々しい手術痕が残っている。「どの瞬間に折れたのかは自分でもわかりませんが、最後の打席ですごく痛かったです」と無念の表情で振り返り「こうなったら、プラスに捉えるしかない。1軍では少ないとはいえ、良い経験を積めた。それを生かすためにも、つなげていけるようにしたいです」と言葉に力を込める。
8月30日の3軍戦で実戦復帰し、今月3日から2軍戦に出場。「1日1本以上のヒットを目標に」、イースタン・リーグでは今季打率.318、9本塁打、39打点の好成績をキープしている。
「もちろん、今季中にもう1度1軍に上がりたいですが、意識し過ぎてマイナスになることもあるので、いつも通り、今までやってきた感じでやっていれば(1軍に)呼ばれると信じています。普通にやっていきます」と自分に言い聞かせるように語る。
小関2軍監督は現役時代、俊足巧打が持ち味の外野手だったが「長距離ヒッターの存在は、やはり重要です。そういう選手がいてこそ、我々のような脇役も光るのですから」と強調する。仲三河にはその才能がある。間もなく1軍でのサクセス・ストーリーを“再開”させるつもりだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)