“遅咲き”右腕の山口廉王に見える成長 コーチが評価…投球フォーム改造に感じた「考える力」

高校2年から本格的に投手挑戦、山口廉王が感じるプロでの手応え
オリックスのドラフト3位右腕、山口廉王投手が順調に成長している。「ゲームを作れるようになってきて成長していると思います。前進している実感はあります」と、山口が静かに口を開いた。
仙台育英高の2年から本格的に投手に取り組んだ“遅咲き”だが、193センチの長身から左足を高く振り上げるダイナミックなフォームから投げ下ろす剛球が魅力。投球フォームがドジャースの佐々木朗希投手に似ていることから“朗希2世”と呼ばれることもあったが、足をたたんで上げる佐々木に対し、山口は足を伸ばして上げるため、スケールの大きさでは負けていない。
高卒1年目とあって、故障しない体づくりを優先するため、社会人との交流戦で短いイニングから投げ始め、ウエスタン・リーグでは7月11日の阪神戦で初先発。先発3戦目となった8月7日の中日戦では、涌井秀章投手と投げ合い、5回を83球、2安打、6奪三振、1四球、1失点で初勝利を挙げた。
次の登板となった8月20日のハヤテ戦では7回を92球、3安打、2奪三振、無失点。最速153キロのストレートとスライダー、カーブ、フォークで、走者を二塁に進めたのは守備陣の拙守による1度だけで2連勝を飾った。「コントロールをしっかりと意識した」という通り、無四球で打たせてアウトを積み重ねた。
テーマにしているのは「ゼロでしっかりと抑える」こと。9月2日のくふうハヤテ戦では毎回走者を背負ったが、4回を92球、5安打、1奪三振、3与四球。初回に許した1失点のみにまとめた。9月11日の阪神戦では5回を70球、4安打、2与死球、1失点。無失点に抑えることはできなかったが、8試合で防御率1.74と安定した投球を続けている。
研究熱心なところも魅力だ。シーズン途中、左足を上げる高さを変えたことがあった。その取り組みについて牧野塁2軍投手コーチは「足を大きく上げることによる疲労なども考えて、いろいろ試しているのではないでしょうか。若いですが、考える力があるんです」と評価する。
「その状態を評価されて入ってきたのですから、最初からいじる(修正する)ことはありません」と、スカウトも務めた牧野コーチは、右腕の成長を温かく見守る。
プロの世界に飛び込んで約8か月。トレーニングの成果もあり、体重は4キロ増えて101キロになり、球威も増した。「1軍で投げるのは早ければ早いほうがいいのですが、そこだけにフォーカスしていません。やることをやっていれば、なるようになるんで」。未来の大器は、焦らず自分を磨き続ける。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)