大谷翔平に感じた“疑問”「裏目に出ている」 HR王へ1本差も…専門家が懸念「先読みしすぎ」

新井宏昌氏が指摘した本塁打後の打席「甘いストライクを見逃すことが多い」
【MLB】ドジャース 6ー3 ジャイアンツ(日本時間20日・ロサンゼルス)
本塁打後の打席に課題あり――。ドジャースの大谷翔平投手は19日(日本時間20日)、本拠地で行われたジャイアンツ戦に「1番・指名打者」で出場。5回に52号逆転3ランを放ち、13年連続のポストシーズン進出に貢献した。ただ、その後の打席では甘い球を見逃して追い込まれると、最後は空振り三振。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも詳しい野球評論家・新井宏昌氏は「ホームランの後の打席が今年の大谷を象徴している」と指摘した。
1点を追う5回2死一、二塁。大谷は左腕ロビー・レイが投じた95.5マイル(約153.7キロ)を左翼スタンドに運んだ。「決して甘い球じゃない。外角の直球を見事にレフトに運びました」。会心の本塁打を称賛する一方、その後に迎えた第4打席には不満を示した。
7回1死。左腕のマット・ゲージと対戦し、カウント1-1からの真ん中低め93.5マイル(約150.5キロ)のシンカーを見逃して追い込まれた。続く4球目のチェンジアップで空振り三振。三振を喫したことより、3球目の甘い直球系を見逃したことが新井氏には納得できなかったようだ。
「フォーシームをホームランした後は、もう直球系は来ないと思って打席に立っているのではないでしょうか。変化球を待っていて、直球系の甘いストライクを見逃すことが今年は多く感じます。ベンチでも相手のデータを見ていると思いますし、配球を読んでいるんでしょうけど、それが裏目に出ているように見えます」
徹底したい好球必打「凡退しているケースが多い」
相手バッテリーから常に警戒される存在だが、本塁打を放った直後はマークが一層厳しくなる。直球を捉えた直後なら、変化球が増えるのは自然の流れ。ただ、変化球だけでは抑えられない。裏をかく場合もあるし、直球を織り交ぜて緩急をつけないと変化球も生きない。直球も頭に入れておくべきで「打席での基本は、一番速い球にタイミングを合わせながら、変化球に対応していくことです」と説明する。
「画面越しに心理状態を探るんですけど、次は変化球を待っているんじゃないかと感じるケースが今年は非常に多い。簡単に甘いフォーシームを見逃しているシーンをよく目にします。球種を先読みしすぎて、上手くはまらずに好球を見逃してしまっているケースが目立ち、悪い方向に作用しているように感じます」
それは数字にも表れている。大谷はここまで52本塁打も打点は98。昨年は54本塁打、130打点だっただけに、打点は明らかに物足りない。新井氏は「今年はソロ(37本)が多いですが、ホームラン以外でも犠飛、内野ゴロなどで打点を稼ぐチャンスがある中で、凡退しているケースが多い」と指摘。もっとシンプルに好機でも好球必打を徹底できれば、数字は改善する可能性がある。
新井氏の厳しい言葉は期待の裏返しでもある。「能力からしたら、もっと打っていておかしくない。打点は120~130あっていい。アベレージ(打率.283)ももっと上がらないと。去年(.310)のようにトリプルクラウン(3冠王)を狙えるぐらいの数字を打てるはずです」。メジャー屈指の数字を残していても、満足できないのは大谷だからこそ。その計り知れないポテンシャルには多くの期待が集まっている。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)