“隠れ首位打者”が見せた15年目の進化 超攻撃スタイルに加わった「.367」の対応力

初球から仕掛けていく超積極打法
2連覇までのマジックナンバーを「4」としている首位・ソフトバンクの中でも、さまざまな起用に応える働きを見せているのが15年目の牧原大成内野手だ。打撃では4番以外の全打順でスタメン出場し、守っては2年ぶりの外野守備に就くなど、まさに“ユーティリティプレーヤー”としてチームに大きく貢献している。また、ここまで打率.304の好成績をマークしており、自身初となる規定打席到達を果たせれば首位打者のタイトルも狙える位置にいる。今回は、そんな牧原選手の打撃について紐解いていきたい。
牧原の特徴の1つといえば、球界屈指といえるほどの積極果敢な打撃スタイルだ。初球に対するスイング率を見てみると、2022年以降は例年30%前後となるリーグ平均を上回る数字を記録。さらに今季は前年の35.5%から48.1%まで上昇しており、約半数の打席で1球目からスイングを仕掛けているのだ。また、初球を打ち返した際はしっかりと結果を残しており、ここまで放った5本塁打のうち4本が初球を捉えたものとなっている。
ただ、積極的なバッティングにはボール球を振りやすくなるというリスクも伴う。牧原のボールゾーンスイング率は、2021年からリーグ平均より10ポイント以上高い40%台を推移。今季は49.8%と特に高いスイング率となっており、2ストライク時には60%台まで跳ね上がっていた。
ボール球への手出しが多いだけでなく、スイング時にバットで捉える割合もさほど高くはないのだが、前述の積極的なアプローチもあって三振の割合は低いという特徴がある。というのも、今季の全打席のうち2ストライクとなった割合は、100打席以上に立っているパ・リーグの打者で最も低い38.7%。多少のボール球を振ることを厭わない積極果敢なバッティングの結果、2ストライクとなる前に決着する打席がとにかく多いのだ。また、1打席あたりの投球数を示すP/PAが今季は3.11まで減少。以前から抜きんでた積極性を見せていたが、今季は例年以上に早打ちの傾向が強まっている。
積極性に加え、思い切った引っ張りが功を奏す
そんなリーグ屈指の積極性を誇る牧原に対し、相手バッテリーも慎重な配球となっているようだ。球種別の被投球割合を見てみると、2022年から変化球の割合が60%台に上昇。今季も63.6%と変化球中心の攻めとなっており、特にスイング率が増している初球の変化球割合は66.5%とバッテリーの警戒具合が見てとれる。
相手バッテリーが変化球中心の配球となっている理由としては、牧原が単に積極性が高いだけでなく、直球を得意としている点も挙げられる。球種別の成績を見てみると、ストレートに対しては例年ハイアベレージを残しており、今季も打率.333と直球キラーぶりを発揮しているのだ。一方、被投球割合の高い変化球に対しては2023、2024年と成績が振るっていなかったものの、今季は打率.287まで改善。ここまで首位打者を狙えるほどの好成績を残せているのは、変化球の対応力向上によるところが大きいと考えられる。
最後に、変化球に対する打球方向のデータを見ていきたい。2021年は左方向の割合が最も高くなっていたが、年々右方向の割合がアップ。今季はここまで50.8%を記録するなど、約半数が引っ張りの打球となっているのだ。さらに、変化球を引っ張った際の打率は前年の.310から今季は.367まで上昇していた。相手投手の変化球を主体とした配球に、初球から仕掛けて引っ張り方向にはじき返すという思い切りの良い打撃で対応し、好結果を残しているといえるだろう。
これまではケガの影響などもあり、開幕から1年を通して一軍に同行し続けたシーズンのない牧原。そんな中で迎えた15年目の今季は、主力に故障が相次ぐ苦しいチーム状況でも献身的な働きを見せ続け、開幕から一度も登録を抹消されることなく一軍でプレー。8月度の大樹生命月間MVPにも輝くなど、激しい首位争いを繰り広げる中で攻守に確かな存在感を示している。このまま2年連続となるリーグ優勝、そして5年ぶりの日本一までチームを引っ張る活躍を期待したい。
(「パ・リーグ インサイト」データスタジアム編集部)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)