引退する美馬を支えた不屈の精神 厳選した「4/266」…球団初の偉業につながった快投

美馬はプロ15年間で266試合に登板、印象に残った4登板をセレクト
ロッテは9日、美馬学投手が今季限りで現役を引退することを発表した。美馬は2011年から9年間にわたり楽天でプレーし、2013年には日本シリーズでMVPに輝く活躍で、球団創設後初となるリーグ優勝と日本一に貢献。ロッテ移籍後も2度の2桁勝利を記録し先発陣を支えた。美馬がプロ生活15年間で果たした266登板の中から、印象に残る4登板をピックアップした(成績は9月10日時点)。
○CSで見せた、値千金の完封勝利(2013年10月19日)
勝てば球団史上初の日本シリーズ進出に王手がかかる試合、美馬は先発のマウンドを託された。2回と3回に2死一、二塁のピンチを迎えたものの、いずれも粘りの投球で得点を許さず。2回にバッテリーを組んだ嶋基宏氏の適時打で2点を先制したことで、試合の行方は美馬の投球によって左右される状況となった。
美馬はポストシーズン特有の重圧に気圧されることなく、4回以降は1度も得点圏に走者を進めない見事なピッチングを披露。9回の先頭打者を四球で出塁させた直後に、後続を併殺打に打ち取るなど、最後まで冷静なマウンドさばきを続け、虎の子の2点を最後まで守りきる完封勝利を達成。チームの日本シリーズ進出を大きく手繰り寄せた。
○9回無死まで1人の走者も許さない快投(2019年7月19日)
立ち上がりから完璧な投球を見せ、同年の日本一に輝いたソフトバンク打線に付け入る隙を与えず。一人の走者も許さないピッチングを続ける美馬の好投に打線も応え、5回に千賀滉大投手から4点を奪う猛攻を見せた。
美馬は落ち着いた投球を続け、8回終了時点でパーフェクトピッチングを継続。大記録達成への期待も高まったが、9回無死から四球と安打を許して完全試合の偉業達成はならず。それでも千賀に投げ勝ち、9回を投げ切って1失点完投勝利という素晴らしい投球でチームに勝利をもたらした。

持ち味を発揮、三振ゼロで勝ち取った白星
○CS進出を手繰り寄せる10勝目(2020年11月5日)
2020年は全120試合制と短縮シーズンとなった影響もあり、クライマックスシリーズに進出できるのはリーグ上位2チームのみだった。ロッテは西武と熾烈な2位争いを繰り広げており、美馬は先発として同年のリーグ優勝をすでに決めていたソフトバンクの強力打線と相対した。
この年、美馬はソフトバンク戦5勝と相性がよく、この試合でも7回2/3を投げて1失点(自責点0)と好投。打たせて取る投球を展開して3年ぶり2度目のシーズン2桁勝利を記録し、ロッテ移籍1年目からクライマックスシリーズ進出に大きく貢献した。
○打たせて取る投球の極致。奪三振0で6回1失点と好投(2022年9月22日)
美馬のキャリア平均の奪三振率は、6.44とやや控えめな数字だが、通算の与四球率は2.20と優秀で、高い制球力を活かした打たせて取る投球を展開してきた。2022年にリーグ連覇を果たしたオリックス打線に対して自らの持ち味を存分に発揮したこの試合は、そんな美馬のピッチングスタイルの極致と言えるだろう。
6回を投げて6安打を喫しながらも与四球はわずか1個に抑え、打たせて取る投球を徹底。2回以降は得点を許さず。6回を投げ切って1失点の好投でシーズン9勝目を挙げ、三振を1つも奪わないという珍しい記録を達成した。
故障に負けず39歳まで投げ続けた技巧派右腕
美馬は藤代高校、中央大学、東京ガスを経て大卒社会人でプロ入りし、現役生活を通じて幾度となくケガの影響で手術を受けてきた。ベテランの域に達してからも度重なる故障を乗り越え、39歳を迎える今シーズンまでパ・リーグの舞台で戦い続けてきた右腕のキャリアは、自身が持つ不屈の精神を体現するものだったと言えよう。
30日のロッテ-楽天は、美馬の引退試合として開催される。強打者たちを相手に打たせて取る投球を展開してきた技巧派右腕が、古巣と相対する現役生活最後のマウンドに注目が集まる。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)