気付いた佐々木朗希の“変貌” かつては「どこか恐々」も…登板前に見せた行動

ドジャース・佐々木朗希【写真:荒川祐史】
ドジャース・佐々木朗希【写真:荒川祐史】

ワイルドカード第2戦の9回に登板しストレートは全て160キロ以上

 ドジャースはレッズとのワイルドカードシリーズを2勝0敗で突破し、4日(日本時間5日)からフィリーズとの地区シリーズに臨む。2年連続ワールドチャンピオンを目指すチームにとって、佐々木朗希投手にリリーバーとして使えるメドが立ったことは大きな前進だ。

 今季先発として結果が出なかった佐々木は、右肩のインピンジメント症候群で5月からIL(負傷者リスト)入りしていたが、レギュラーシーズン終盤、リリーバーとして戦列復帰し2試合に登板。計2イニングを1安打4奪三振無失点に抑えた。最初の試合ではカーブ、スライダー、チェンジアップも駆使したが、2試合目はストレートとスプリットの2球種だけで3者凡退に抑えた。

 そして、1日(同2日)に行われたワイルドカード第2戦で、佐々木は8-4とリードして迎えた9回、5番手として登板。11球中7球を占めたストレートは全て160キロ台を計測し、残りの4球はスプリットだった。先頭打者と次打者はいずれもスプリットで空振り三振に仕留め、3人目もインハイの160キロで力のない遊直に打ち取り、試合を締めくくったのだった。

「スピードもありましたが、何よりも目を引いたのはスプリットの落差でした。特に2人目の(ギャビン・)ラックス(内野手)のバットに空を切らせた球は凄かった。打者にとって、あのボールをとらえるのは難しいと思います」。こう目を丸くしたのは、現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも詳しい野球評論家・新井宏昌氏だ。

 ドジャースに所属する3人の日本人投手(佐々木、大谷翔平投手、山本由伸投手)はいずれもスプリットを持っているが、三者三様、それぞれ特徴が異なるという。「一番落差の大きいのが、佐々木のスプリットです」と新井氏。球速も140キロ前後で、ストレートとの球速差が約20キロと大きい。対照的に「打者がフォーシームやツーシームと間違うくらいスピードがあり、小さく変化するのが山本のスプリット」と説明。確かに150キロ近い球速を叩き出している。

三者三様のスプリット「大谷はエンゼルス時代ほど有効でない」

 一方、大谷のスプリットはというと、「エンゼルス時代には、佐々木と山本の中間くらいの落差があり、三振を多く取っていましたが、今季復帰後ははっきりとしたボールになることが多く、有効な武器になっていないのが現状です」と見ている。

 また、ワイルドカードシリーズ第2戦での佐々木を見て、新井氏が「感心した」のは、登板前のブルペンでの立ち居振る舞いだった。8回くらいから、鬼気迫る表情で壁当てトレーニング用ボールをフェンスに繰り返しぶつける動作を繰り返し、マウンドでも目いっぱい腕を振る様子が見られた。

「これまでの佐々木は、故障の影響もあってか、どこか恐々投げているような印象がありました。専ら先発していたこともあって、あのように気持ちの入った準備の仕方を、われわれが目にする機会はありませんでした」と振り返り、「佐々木のイメージが少し変わりました。脚の上げ方にも躍動感がありますし、活躍してくれるだろうという期待感、好感が高まりました。チームメートやファンの印象も変わったのではないでしょうか」と指摘した。短いイニング限定の役割で、常にフルスロットルで投球できることが、好結果を導いているのかもしれない。

 ワイルドカードシリーズ2試合では打線が爆発し、計18点を奪ったドジャースだが、リリーフ陣の不安定さは相変わらずで、いずれも終盤に満塁のピンチを招き、追い上げを許した。それだけになおさら、逞しさを増した佐々木は今後大事な場面を任されることになりそうだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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