なぜ大谷翔平は不振に陥ったのか? 専門家が「結果は出ないかも」と感じた理由

ドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】
ドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】

チームはブルワーズとのリーグ優勝シリーズ第1戦に競り勝った

【MLB】ドジャース 2ー1 ブルワーズ(日本時間14日・ミルウォーキー)

 ドジャースは13日(日本時間14日)、敵地で行われたブルワーズとのリーグ優勝シリーズ第1戦に2-1で競り勝ったが、「1番・指名打者」で出場した大谷翔平投手は2打数無安打3四球。ポストシーズン7試合で打率.138(29打数4安打=成績は13日現在、以下同)と振るわず、特に左投手に抑え込まれている。

 大谷は初回、ブルワーズ先発の左腕アーロン・アシュビー投手に対し、カウント2-0から内角のシンカーを打つもファウル。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏は、「この3球目のシンカーは、見逃せばボールでした。これに手を出した時点で、今日も期待されるような結果は出ないかもしれない、という気がしました」と語る。この打席は結局、四球を選び出塁。3回の第2打席は、ブルワーズ2番手の右腕クイン・ブリースター投手が投じた内角低めのカットボールを打ち返したが、左飛に倒れた。

 7回の第4打席では、左腕ジャレッド・ケーニッグの内角のシンカーをとらえ痛烈な当たりを放ったが、相手野手の正面に飛び一ゴロ。ただ、これだけヒットが出なくても、両チーム無得点で迎えた5回1死二塁、1点リードの9回1死二、三塁と2度にわたって得点機で申告敬遠された事は、今季55本塁打の打棒がいかに相手にとって脅威となっているかを物語る。

「相手にしてみれば、大谷に打たれると長打となり、勝負を決める1打になりがちですから、無理もありません」と新井氏。後ろの2番打者ムーキー・ベッツ内野手がポストシーズン打率.333の打棒を振るっていても、大谷に対する警戒が緩むことはない。

「首脳陣としては投手として大谷に休養を与え、打撃に集中させたい」

 大谷はポストシーズンに入ってから、9月30日に行われた初戦のレッズとのワイルドカードシリーズ第1戦で華々しく2本塁打を放ったものの、以後はバットが湿っている。右投手に対しては10打数3安打5四球(打率.300)2本塁打も、左投手に対しては19打数1安打1四球9三振(打率.053)とからきしである。

 レギュラーシーズンでは、右投手に対し打率.283(389打数110安打)、40本塁打。左投手に対しても.279(222打数62安打)、15本塁打で大差はなかったのだが、ポストシーズンに入ってから極端に左腕を苦手にしている格好だ。

「実はレギュラーシーズン中も、今季の大谷は特に左投手と対戦した時に、強く打とうするあまり、引っ張る動作が強くなり、投球をとらえきれない傾向が現れていました。ポストシーズンに入って相手のギアが上がり、劣勢であっても一線級の中継ぎ左腕が登板してくるようになって、より傾向が顕著になったのだと思います」と新井氏は分析する。

「もともと中堅より左方向に長打を打てるのが大谷の持ち味ですから、そちらの方へ打ち返す意識を強く持つことが、復調の鍵だと思います」と提言した。

 この日の先発投手は、4日のフィリーズとの地区シリーズ第1戦に先発し6回3失点に抑えた大谷が、中8日で任されてもおかしくはなかった。実際にはブレーク・スネル投手が中6日で先発。翌15日も山本由伸投手が中5日で先発する。それだけスネル、山本への信頼が厚いのも事実だが、新井氏は「首脳陣としてはなるべく投手としては大谷に休養を与え、打撃に集中してほしいと考えているのだと思います」と推察する。

「時おり、内角球を逆方向へ打ち返す打撃も見られますし、深刻なスランプに陥っているわけではない。ちょっとしたきっかけで爆発する可能性があると思います」と新井氏が予言する大谷のバットに、再び火がつくのはいつか。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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