阪神、近本の三盗が成功した理由「パターンあったかも」 専門家が指摘したDeNA東の“油断”

阪神・近本光司【写真:小林靖】
阪神・近本光司【写真:小林靖】

阪神などで捕手として活躍した野口寿浩氏が解説

■阪神 2ー0 DeNA(15日・甲子園)

 セ・リーグのCS(クライマックスシリーズ)ファイナルステージは15日、レギュラーシーズン優勝の阪神が2-0でDeNAに先勝し、1勝のアドバンテージを含めて2勝0敗とした。6回に近本光司外野手が決めた三盗が勝敗を分けるポイントとなった。現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)の4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が解説する。

 阪神は両チーム無得点で迎えた6回、DeNA先発の東克樹投手に対し、先頭の近本が遊撃内野安打で出塁した。近本はレギュラーシーズンで東に7打数無安打。この日も第1、第2打席ともに凡退しており、“苦手”から今季初の出塁だった。

 続く中野拓夢内野手の送りバントで二塁に進塁。続く3番・森下翔太外野手の初球にいきなりスタートを切ると、悠々と三塁を奪った。山本祐大捕手が送球できないほどだった。森下もすかさず3球目のシュートを中前にはじき返し、待望の先取点をもぎ取ったのだった。

 野口氏は「近本の三盗成功はめちゃくちゃ大きいプレーでした」と指摘。その背景を「先制点を与えたくない東にしてみれば、打者の森下とは相性も悪く(今季6打数3安打)、打者に100%神経を集中していたのだと思います」と分析する。

「三盗は100%近い確信がなければ、試みるべきではない」とよく言われるが、近本は東が足を上げる前にスタートを切っていた。

「実際に近本が相手のどこに着目していたのかはわかりませんが、相手投手の映像を研究していると、たとえば投球前に何回首を回して走者を目で牽制するかなどにパターンがあって、走りやすいタイミングをつかめることがあります」と野口氏。いずれにせよ今季を含め4年連続6度も盗塁王に輝いている近本の能力が発揮された場面と言えそうだ。

相手の守備隊形が前進守備に変わり、犠飛でも得点が入る状況になった

 さらに野口氏は自身の経験を踏まえ、「あの場面ではバッテリーがともに打者に集中してしまい、捕手の山本も東に『走者をケアしておけ』と注意喚起できていなかったと思います。捕手としては悔やまれるところです」と付け加えた。

 近本の三盗成功のお陰で、場面が1死二塁から1死三塁に変わった意義は大きかった。「相手の守備隊形が前進守備に変わってヒットゾーンが広がり、しかも犠飛でも点が入る形になって、森下が比較的気楽に打てる状況になりました。逆にDeNAバッテリーは、暴投や捕逸が失点に直結することになり、重圧が高まりました」と野口氏は説明した。

 阪神は今季、総得点やチーム打率ではDeNAに劣ったが、リーグトップのチーム防御率、最少の総失点を誇る投手陣を前面に、CSファイナルステージでも先手を取った。今後も攻撃面では、リーグトップの100盗塁を決めた走力がカギを握りそうだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

RECOMMEND

CATEGORY