2冠でも…佐藤輝明に感じる「伸びしろ」 凝縮された新境地、垣間見た今季の“成長”

阪神・佐藤輝明【写真:小林靖】
阪神・佐藤輝明【写真:小林靖】

1点ビハインドの8回1死一、二塁でDeNA伊勢のフォークをとらえた

■阪神 5ー3 DeNA(16日・甲子園)

 阪神の佐藤輝明内野手は16日、本拠地で行われたDeNAとのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第2戦に「4番・三塁」で出場し、1点ビハインドの8回に値千金の同点適時打を放った。今季の成長を象徴するような1打。チームは延長10回に森下翔太外野手がサヨナラ2ランを放ち、5-3で勝って3勝0敗とし日本シリーズ進出へ王手をかけた。

 阪神は2-3の1点ビハインドで迎えた8回、1死一、二塁のチャンスに佐藤輝が打席に立った。DeNAのセットアッパー・伊勢大夢投手の初球のフォークが外角高めに浮いたところを、コンパクトなスイングでとらえる。打球は一、二塁間を抜け、佐藤輝は雄叫びを上げながらガッツポーズを繰り返した。

 リーグ優勝した阪神はこのCSで、1勝のアドバンテージが与えられている上、最大6試合で負け越しの可能性がなくなった時点で日本シリーズ進出が決まるため、引き分けは勝利に等しい。そういう意味でも貴重な一打だった。

 今季の佐藤輝は40本塁打102打点でリーグ2冠に輝き、打率.277、出塁率.345、149安打を含めて全て自己最高成績だった。

 現役時代に阪神、横浜(現DeNA)など4球団で21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「今季はここぞという場面では、常に強振してホームランを狙うのはなく、軽打に近い打ち方を見せることが増えました。何でもかんでも遠くまで飛ばそうとするのではなく、『ここはヒットでいい』と割り切った打席が目立ち、トータルで確実性が上がりました」と分析。この日の同点打は、その典型例と言えそうだ。

 野口氏はさらに「佐藤輝の場合、本人が軽打のつもりで打っても、ナチュラルなパワーがあるので、そのままスタンドインしたケースがありました」とも付け加える。臨機応変な意識の切り替えが、本塁打を含めて全体的に数字が上がった要因かもしれない。

両リーグを通じ断トツ163三振も「改善の余地があるということ」

 一方、レギュラーシーズンで両リーグを通じ断トツの163三振を喫した事実もある。野口氏は「まだボール球を振ることは多いです。その分、改善の余地、伸びしろがあると言えると思います」と前向きにとらえている。確かに2冠を獲得してもなお伸びしろがあると思えば、来季以降がますます楽しみになる。

 この日の初回、1死二、三塁のチャンスでは、DeNA先発の竹田祐投手にインハイの149キロの速球で詰まらされながら、左翼線にポトリと落ちる先制適時打。4回先頭の第2打席も、内角の厳しいコースの速球を振り抜き、右翼線二塁打で出塁した。豪快さよりも、しぶとさが目立つ打撃内容だった。

 CSファイナルステージ2試合を通じノーアーチだが、打率.500(8打数4安打)、2打点をマークしている。そろそろ持ち味の一発が飛び出してもいい頃だ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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