巨人のリーグVを支えた陰のヒーローとは?

セ・リーグをぶっちぎりで制した強さの秘密

 2年連続44度目となるリーグ制覇(1リーグ時代を含め)を決めた巨人の原辰徳監督は現役時代の背番号「8」と同じ数だけ、宙を舞った。22日の広島戦開始直後、マジック対象の2位・阪神がヤクルトに敗れたことで、優勝が決定。その後の試合でも9回に山口、マシソン、西村という強力リリーフ陣を打者一人ずつに惜しみなく使い、広島を2-1とねじ伏せた。優勝監督インタビューでは「チームの勝利のため、個の力、時には自己犠牲を持って戦った見事な選手達です」と顔を紅潮させながら、ナインを労った。

 今季、セ・リーグをぶっちぎりで制したその強さの秘密とは何だったのか。

 打つ方では今季途中から4番に座った村田修一、投げる方では新人離れした投球を見せたドラフト1位の菅野智之がチームを支えたのは間違いない。だが、それぞれで陰の「MVP」を選ぶのであれば、打は長野久義、投は中継ぎのスコット・マシソンの名が挙げられる。彼らの奮闘なしでは連覇はあり得なかった。

 昨年、最多安打のタイトルを獲得した長野は今季、極度の打撃不振に陥った。4月10日の阪神戦(甲子園)では5打数無安打に終わり、打率は2割1分4厘とどん底に。1番打者としては、あってはならない数字だった。

 その後、2割5分を下回る成績が続いた長野はついに1番打者を外された。たまに上がるヒーローインタビューのお立ち台でも「チームに迷惑をかけてばかりで申し訳ない」と謝罪の言葉ばかり。それでも、原監督は長野の復調が不可欠と判断し、4番と9番以外の打順を試しながら、復調のきっかけを模索し続けた。

 長いトンネルを抜けたのは8月だった。好調の阿部慎之助、村田に続く「5番」に定着するようになってから、長野は水を得た魚のように蘇った。1番と違って制約の少ない5番を任されることで、その特長でもある思い切ったスイングが可能となった。相手バッテリーが前の2選手に神経を使うことで、5番・長野に対するマークが多少、甘くなっていたこともある。3、4月の28試合で打率は2割3分8厘だったのに対し、8月の月間打率は27試合で3割2分5厘。その上がり幅は驚異的だった。

 長野はスコアボードに表示される自身の打率が急上昇していくことで、自信を取り戻していった。坂本勇人の不振と入れ替わるように1番打者に戻るとその後も打ちまくり、気が付けば、昨年と同様、阪神・マートンと最多安打を争うほどのヒット数になっていた。チームに疲れが見え始めた夏場以降に調子を取り戻し、勝負強さを見せたことは、巨人にとっても大きかった。劇的に復調した長野がリーグVの陰の立役者といっても過言ではない。

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