重圧と戦い、日本をW杯30連勝&6連覇に導いた女性監督「やっと熟睡できそう」
侍ジャパン初の女性監督・橘田監督「選手たちが耐えて、最後ようやく一つに」
侍ジャパン女子代表は8月31日(日本時間9月1日)、「第8回WBSC 女子野球ワールドカップ」(米国フロリダ)の決勝でチャイニーズ・タイペイを6-0で破り、前人未到の30連勝と6連覇を達成した。
重圧から開放された瞬間にあふれた涙は、一瞬で吹き飛んだ。「選手たちの笑顔を見て、良かったなとホッとしました。本当に選手に助けられた大会でした」。侍ジャパン初の女性監督としてワールドカップで初めて指揮を執った橘田恵監督は、喜びを爆発させる選手たちを見て自然と笑顔になっていた。
苦しい道のりだった。オープニングラウンド第3戦のカナダ戦では2安打で2点しか奪えず、2-1の辛勝。12四死球をもらいながら、ことごとくチャンスをつぶし、嫌なムードが漂った。続く第4戦のキューバ戦では、スクイズを失敗した直後の5回裏に先制されて、窮地に追い込まれるチグハグな試合展開。指揮官と選手との間に、場面に応じた状況判断の開きがあった。
「サインで意思疎通を図っているつもりでしたが、言葉が足りないと気が付きました。ここでは日本語は武器。試合中もどんどん会話をしようという話をしました。苦しい試合が続きましたが、選手たちが耐えて、最後ようやく一つになれました。日本らしい野球ができました」とホッと息をついた。
前日のベネズエラ戦でエンドランや盗塁が決まり、目指す野球に手応えを感じたとはいえ、前夜は午後9時にベッドに入り、目が覚めると午後11時。その後は一睡もできなかったという。「やっと熟睡できそうです」と笑った。
10日間で9試合を行うハードな日程で全勝。計59イニングで失ったのはわずか4点、5試合が完封と投手を含めた守備力の高さが際立った。「守備と投手陣は良かったです。ただ、今回は予想以上に走れなかったですね。相手が外してくるようになりましたし、クイックも速かったです」と他国のレベルアップに目を見張る。
中でも最も驚異を感じたのは、アメリカとカナダの打線だった。「表彰式で並んでもわかるように、体格が違います。打力ではかなわない。日本は小粒揃いでしたが、一人一人が役割を果たせたことが良かったと思います。盗塁や進塁打、日本が決勝でやった野球がスタンダードになる日が来るんじゃないかなと感じました」。決勝で完成形を示した橘田流スモールベースボールに胸を張った。
(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)