神村学園(鹿児島)の記録員が見つめた、特別な甲子園

大島高校の試合を観戦した、神村学園の生徒

 指笛が「ピーピー」となり、伝統舞踊が甲子園を彩った。奄美群島からの来場者、また関西に住む奄美大島出身者、約6000人が甲子園のアルプススタンドを埋め尽くした。奄美大島から出場した21世紀枠・大島高校(鹿児島)が名門・龍谷大平安(京都)と対戦した1回戦。大島高校の生徒たちはまず鹿児島市までフェリーで11時間かけて移動し、そこから新幹線で甲子園に入った。それほどの一大イベントだった。

 試合は2-16と敗れたが、春夏通じて初めての甲子園に、島民たちは熱狂した。最高の時間だった。初戦敗退に落ち込むかと思いきや、ある島民は「こんな優勝候補と戦えるなんて幸せなこと。だって勝ち進まないとこんな強いところとは当たれないでしょう」。80代の女性も笑いながら「死ぬ前に見られてうれしいよ。冥土の土産じゃよ」と幸せそうな顔を浮かべた。

 甲子園球場では、応援する人々もまるで島の祭りのように一体化し、盛り上がっていた。

 そんなお祭り気分のアルプスに1人、ポツンと座る球児がいた。同じ鹿児島県から今大会に出場していた神村学園の記録員の登山幸一くんだった。

 記録員は出場メンバーではないが、ベンチに入り、スコアブックをつける役割を担う。選手と一緒に声を張り上げる、重要な役割を持つ1人の部員である。登山くんは、奄美大島出身だった。神村学園・小田大介監督から「うちのチームの代表として、しっかり応援してこい」とチームから1人だけスタンド応援を許された。監督への感謝の気持ちを胸に抱き、宿舎から甲子園へと向かった。

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