育成力が混セを抜け出すカギ? 結果出したヤクルトを他球団はいかに追うか
ベテラン偏重の巨人、阪神、中日…連覇途絶えた巨人は転換のチャンス
前回のパ・リーグに続いて、今回はセ・リーグ各球団の野手育成戦略を打席の割り当てから推測していく。グラフは「各球団が一軍と二軍の試合において、どの年齢の選手にどれだけの打席を割り当てたか」を示している。
パ・リーグのグラフと比較すると、セ・リーグは全体的に一軍における右側への偏りが目立つ。実際に打席数で重み付けした加重平均を取ると、野手の平均年齢はセ・リーグの方がおよそ1歳高くなっており、パ・リーグと比べ野手の世代交代がやや遅れているようである。
特に巨人、中日、阪神は主力野手のベテラン化が著しく、リーグ野手平均年齢を大きく引き上げる結果になっている。この3チームのここ10年は優勝争いに多く絡める状況にあり、目の前の成績を優先しがちだったようで、近年は応急処置的に他球団のベテラン選手を獲得する補強が目立った。そのため若手にチャンスを与えにくく、現時点では中堅の年齢帯で主力化している野手が少ない。痛みのともなう世代交代が迫っていると言えるかもしれない。
ただし、いずれのチームも一軍がベテラン化しているという共通点を持ちながら、二軍については異なる形のグラフを示している。3チームの二軍の運用方針の間には大きな差異があるようだ。
巨人は二軍においても30代以上に多く打席を割り当てており、若手野手を育てる場所というよりは、一軍主力野手の調整場所としての色合いが特に強くなっている。V9以来となるセ・リーグ4連覇が懸かっていたため、実績から数字の読みやすい相川亮二と金城龍彦を補強してシーズンに臨んだこともあり、ベテランが過剰に存在する状態だったことも影響している。
しかし結果的に巨人は優勝を逃した。連覇が期待される状況ではなくなったため、来シーズン以降は若手野手に打席を割り当てる余裕が生じると考えられる。また、高橋由伸、井端弘和、金城らベテラン勢の引退も続いており、二軍の運用方針を変化させるタイミングが来ている。
2015年のドラフト会議では、巨人は三軍の設置を見据え育成契約も合わせてセ・リーグ最多となる16人の選手を指名し、育成のスピードと精度を促進させる狙いが見て取れる。巨人における二軍の位置付けは間違いなく変化しつつあると言えるだろう。