【林昌範の目】トライアウトは「墓場」ではない 元巨人左腕が語る意義「一つの区切り」
昨季のトライアウトを受験、周囲からは疑問や反対の声も…
林昌範です。13日に12球団合同トライアウトがタマホームスタジアム筑後で行われました。僕も1年前にマツダスタジアムでトライアウトを受験しましたが、この機会がプロ野球選手として最後のマウンドになりました。
実はトライアウトを受けるまで非常に迷いました。周囲から「1軍でどれだけできるか他球団の編成も知っている。受ける必要があるのか」「1日だけアピールしてもあまり意味がない」と疑問や反対する声もあったのが事実です。トライアウトを受けたのは現役を続けたい気持ちはもちろんありましたが、それだけではない思いもありました。それはトライアウトを受けることで自分の気持ちが色々変化するのではないかと思ったからです。
結論を言えば、参加して本当に良かったです。チームのためでなく、自分のためにプレーするのは人生で初めての経験でした。1軍で出場機会がないままユニフォームを脱ぐ若手選手、1軍で実績十分なベテラン選手もグラウンドに立てば「野球を続けたい」という思いは同じです。ロッカールームから異常な緊張感でした。自分以外は敵になります。ただマウンドで投げた時に再認識したのは「野球って楽しいな」という思いでした。色々な方に支えられてプロ野球の世界でプレーできたことに改めて感謝しました。
今回のトライアウトは西岡剛選手、成瀬善久投手ら実績のある選手も参加しました。相当な覚悟があったと思いますし、周囲からの色々な意見も耳に入っていたと思います。僕もそうでしたが、全盛期の力ではないことは本人たちが自覚しています。それでも参加した姿に僕は敬意を示します。
今回のトライアウトから観客の観覧が初めて有料になりました。賛否両論ありますが、僕は賛成です。有料になっても5000人以上のお客さんが観に来られたのが1つの答えだと思います。野球人生をかけて選手たちがプレーする姿に心を突き動かされる方もいたのではないでしょうか。野球を続けられる選手はごく一握りかもしれません。ただ決してトライアウトは一部で揶揄されるような「プロ野球選手の墓場」ではないように感じます。野球を続けるにしろ辞めるにしろ、ここが一つの区切りでまた新しい世界にスタートを切る場所だと思います。
文/構成 ココカラネクスト編集部 平尾類