金子弌大が馴染みの薄い日本ハムを選んだ訳とは? 「自分が甘えられない」
沢村賞を獲得もリーグ優勝は未経験「やり残したものは何かと言われたたらそこ」
オリックスから自由契約となり日本ハムへの入団が決まった金子弌大投手が10日、札幌市内で入団会見を行った。背番号はオリックスで慣れ親しんだ「19」を背負う一方、登録名を「金子千尋」から「金子弌大」(かねこ・ちひろ)に変更。心機一転、新天地で自身初の優勝を目指す。
「35歳のルーキーの気持ちを持って、北海道のために一生懸命頑張ります」とあいさつした金子。登録名変更は、心を新たにして臨む決意の表れだった。プロ入り当初からお世話になっている風水の先生に勧められた新しい名前を即決。「これを期に新たな金子弌大をプロ野球ファン、北海道のファイターズファンの皆さんに見せたいという思いがあります。新しいチーム一からスタートという風に思っています」と力を込めた。
敢えて馴染みの薄いチームに飛び込んだ。若い選手が多い日本ハムには、親交のある選手はいない。「あいさつぐらいはしますけど、ほとんどないですね。ご飯に行ったりする選手もいないですし。多少、そういう環境を選んだところもあります。自分が甘えられないというか、何も知らないところでまた一からやるというのもいいのかなと」と再出発に懸ける覚悟の一端を明かした。
栗山英樹監督の情熱的なラブコールに心を揺さぶられて入団を決めた。オリックス在籍時から「選手のことをすごく考えているのかなと見ていました。全然ヒットを打っていない選手がヒットを打った時に涙を流したという熱いところも見えていましたし、ストレートに思いを伝える方なのかなと思っていました」と印象を抱いていたという。今回会って話をして「本当にその通りでした」と距離感が縮まるのに時間はかからなかった。
栗山監督も、金子の中にある熱い気持ちを感じ取っていた。「もっと野球を学びたい、うまくなりという思いがどんどん広がっているのを感じたので。前に進みたいところを何とかバックアップしたい、お手伝いしたい。それが絶対にチームのためにもなる」と今季4勝7敗に終わった沢村賞投手の再生に全力を注ぐ。
35歳になっても金子の向上心は衰えを知らない。「周りからはスピードが落ちたり、精度が落ちていると思われていると思いますが、まだまだ改善の余地というか、良くなる可能性もゼロではないと思っているので。そういうところを目指さないと実力も上がっていかない。まだまだ上手くなりたいし、速い球も投げたい。今まで経験したことのない優勝というところに向かって、できることを全てやりたいと思っています」と語った。
「やり残したものは何かと言われたたらそこ」と渇望するリーグ優勝と日本一へ。“35歳のルーキー”は新天地でまっすぐに歩んでいく。
(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)