医療用ギプス、手作り踏み台&平均台…鷹・武田&大竹、“不思議”練習で得るものとは?

お手製の練習器具で自主トレを行うソフトバンク・武田翔太【写真:福谷佑介】
お手製の練習器具で自主トレを行うソフトバンク・武田翔太【写真:福谷佑介】

「下半身は使わない。使おうとして使うもの、ではなく、勝手に使われるもの」

 ソフトバンクの武田翔太投手が10日、福岡・春日市内で行なっている自主トレを公開した。チームメートの大竹耕太郎投手、松田遼馬投手、田浦文丸投手、広島の横山弘樹投手、ケムナ誠投手も参加し、2月1日のキャンプインに向けて汗を流している。

 練習の主眼に置くのは“理想”のフォーム固め。練習の多くは技術練習に充てられており、この練習法が独特だ。医療用のギプスを軸足の膝にはめてキャッチボールを行ったり、武田お手製の踏み台と平均台を用いてシャドーピッチングやネットスローをしたりと、他ではなかなか見られないような練習法を実践している。

 武田が「3種の神器」と表した、それぞれの器具による練習の狙いはどこにあるのか。まず、登場したのは、膝の靭帯を負傷した人などが付ける医療用のギプスだ。武田や大竹らは、これを軸足に巻きつけ、膝が曲がらない状態にしてキャッチボールを行う。軸足が折れないように意識づけをするため。これでは“下半身を使う”ことができないように見えるが、武田曰く「下半身は使わない。使おうとして使うもの、ではなく、勝手に使われるもの。足を使わないため。ロックしちゃえば使えないので」なのだという。

 次に出てくるのは、踏み台と平均台だ。踏み台は踏み出し足側に置くパターンと、軸足で踏むパターンと2種類。踏み出し足に置く際は「フォロースルーのポジションを作るため。その形を作ってから、逆算してフォームを作っていく」。そして、軸足で台に乗り、そこから踏み出す練習は「しっかりと踏み出し足で踏む感覚を作るのと、重心を変えるタイミングを掴む」ための練習だ。

 平均台の上で投球フォームを繰り返すのは「しっかりと上から地面を踏むためです。綱渡りをするときって、人は上から綱の上に足を乗せますよね?細いところに足を乗せるときは怖いから出来るだけ上から乗せようとする。無意識にその感覚をできるようにするためです」と武田は説明する。棒を担いで振るのは、力のロスのない体の使い方を体に染み込ませるためだ。

 武田と大竹が目指すのは、しっかりと位置エネルギーを確保し、倒れこむようにして体を上から下へと振り下ろして投げるというもの。世に言われる投球フォームの形とは「真逆」だというが、自分たちなりに「まずは低めに強い球を投げられることに重点を置いていて、そのためのフォーム作りをやっています」と確固たる信念を持っている。

 武田がこの理論を取り入れたのは昨シーズン途中。なかなか結果が残せず苦しい序盤となったが、一転、シーズン終盤、ポストシーズンと配置転換された第2先発、中継ぎの立場でキッチリと結果が残った。「こうすれば間違いないというのがハッキリしている。ノビも起動も違う。例年になく自信は持っている」。2015年、2016年と2年連続で2桁勝利をマークした右腕が目指すのは、復活ではなく新生。ソフトバンクのエース候補として期待されてきた右腕が、ついに覚醒の時を迎えそうだ。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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