大谷翔平、復活へ“知のせめぎあい” 5日から再びアスレチックス、マリナーズ戦
前回アスレチックスは内角攻め、マリナーズは外角攻めだった
■エンゼルス – アスレチックス(日本時間5日・アナハイム)
エンゼルスの大谷翔平投手は3日(日本時間4日)のカブスとの交流戦で出番はなく、5月30日(同31日)以来4試合ぶりの欠場となった。チームは4日(同5日)から本拠地開催の3カード8連戦を戦うが、最初の2カードは今回のロード8連戦のうち7試合を戦った同じア・リーグ西地区のアスレチックスとマリナーズとの対戦となる。
対照的な組み立てで挑んできたアスレチックスとマリナーズとの再戦で、大谷が両軍のバッテリーをどう攻略するのかが見どころの一つであろう。
5月末に戦ったア軍は内角を意識させる配球が顕著だった。大谷はその攻めに屈せず、3試合で立った14打席で計19本のファウルを放っているが、その約半分の9本は右肩の開きを極力我慢してボールの内側を叩く「インサイドアウト」のスイングで左方向へ打ち返したもの。
左肘がたたまれグリップが先に出てバットのヘッドを抜くような軌道のインサイドアウトから放たれる打球は、ドライブがかかり落ちる打球とは異なり飛距離が出る。大谷は引っ張ってもよさそうな内角球にもこのスイングを貫いているーー。
5月28日(同29日)のアスレチックス戦での5打席目、カウント1-2から相手の4番手ソリアが猛抗議するほど際どい外角低めへのカーブを見極めると、直後の5球目、内角高め直球をインサイドアウトのスイングで三塁側へのファウルにして凌ぎ、最後は153キロの直球を右前に運ぶ決勝の2点適時打を放った。外角の残像を生かして胸元を突いた相手バッテリーの思惑を完膚なく打ち砕いたそのファールが殊勲の一撃に結び付いた。打球の質とは別の次元でも大谷が理想とするスイングが奏功した一例である。
一転して、5月30日(同31日)からのマリナーズとのカードでは相手バッテリーに外角を徹底して責められた。大谷は同カード4連戦で菊池雄星が登板した初戦に欠場後、残り3試合に先発出場。その1試合目では技巧派右腕リークから甘く入るシンカーを真骨頂のインサイドアウトのスイングで左翼フェンス越しの自軍ブルペンへライナーで叩き込んだ。
「まあまあいいところのチェンジアップなので。もちろん、完璧ではないですけど、比較的良いポイントでは打てたかなと思います」
甘く入ったとはいえ、外角へシュート回転で沈む軌道のチャンジアップを引っ張れば右翼方向への飛球に終わった可能性も大いにある。今季3号には好感触以上のものがあったと思われる。
しかし、その翌日からの2戦はミローン、ゴンザレスの両左腕に封じられ無安打。両投手ともプレート板の一塁寄りに軸足を置き、上げた右足のつま先が内側を向く「インステップ」で踏み込んでくるため、左打者は腰を引きがちになる。ましてやイサイドアウトを強く意識する大谷の重心は内寄りにかかる傾向になり、外角の厳しいゾーンにはバランスを崩しがちになる。
マ軍のデービス投手コーチは詳述を避けたが、「これまでのビデオはもちろん参考にしている。もちろん見るのはエンゼルスとうちの試合だけのビデオだけではない」と話し、ミローン、ゴンザレス両左腕の特徴を大いに生かすため、ア軍の内角攻めを参考材料にして、それを逆手に取った策で臨んだとも推測できる。大谷はマ軍投手陣に3試合で13打数2安打、打率.154に抑え込まれた。
この日からの本拠地戦で、相手バッテリーが紡ぐ配球の糸に大谷がどう切り込んでいくのか。18.44メートルの空間で交錯する「知のせめぎ合い」は見ものである。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)