利府が“目標”を超えた瞬間 公立高校対決に見えた未来への希望
利府が甲子園で勝つために佐賀北から学んだこと
最後までどちらに転がるかわからない展開だった。13日に行われた利府(宮城)-佐賀北(佐賀)の一戦。利府が2点リードで9回を迎えた。キャプテンの上野幹太選手は「僅差ならばうちらは競り負けない」と自信を見せたように、2アウト満塁のピンチになっても動じなかった。2007年大会で公立高校ながら見事、頂点にたった佐賀北を4-2で退け、2回戦へ進出。夏の勝利は初めて。そして宮城県の公立校が夏の甲子園で勝ったのは1983年の仙台商以来のことだった。
「公立高校がどうやったら甲子園で勝てるのか。目標としていた学校に、自分たちの野球で勝利できたことはとてもうれしいです」
穀田長彦監督は感慨深い表情で振り返った。今年の4月に部長から監督に就任したばかり。試行錯誤の中で目指してきたのは佐賀北の野球、百崎敏克監督の指導方法だった。だからこそ、初戦で戦った佐賀北に感謝した。
佐賀北が2007年に優勝した翌年の2月。宮城県内の高野連の会合に百崎監督が招待された。そこで穀田部長(当時)は食い入るような視線をそそぎ、どうやったら強豪私立に聖地で勝てるのかを必死で吸収しようとした。
「佐賀北の野球を学びたい」
そう思いを募らせた穀田監督が百崎監督を見習って導入したのが野球ノート。選手に書かせて、監督が読む。野球への取り組みを文字で表現させることで選手の考えが分かる。最初のうちはただ練習メニューを羅列しただけで、何を伝えようとしているのか分からない内容だったが、時間がたつにつれて、部員たちは自分が今、何を考えているのかを具体的に書いてくるようになった。
選手とのコミュニケーションにも役立った。自分の話が選手に伝わりやすくなり、試合での迅速な意思の疎通にもつながった。