「信頼関係をどう勝ち取るか」 ロッテ通訳25年目の大ベテランの使命感【パお仕事名鑑Vol.5】
ロッテで通訳25年目を迎える大ベテラン矢嶋隆文さん
グラウンドの上で輝く選手やチームを支えているのはどんな人たちなのか。パ・リーグで働く全ての人を応援する、パシフィック・リーグオフィシャルスポンサーのパーソルグループと、パ・リーグインサイトがお届けする「パーソル パ・リーグTVお仕事名鑑」で、パ・リーグに関わるお仕事をされている方、そしてその仕事の魅力を紹介していきます。
矢嶋隆文さんは1995年に千葉ロッテマリーンズに通訳として採用され、今シーズンで25年目を迎える大ベテラン。現在は、ブランドン・レアード選手など英語圏の選手を担当している。矢嶋さんはアメリカの大学で野球経験があり、帰国後はアメリカの大学の日本校で職員として勤務。バレンタイン監督が千葉ロッテで指揮を執る際に、2軍監督も元メジャーリーガーのアメリカ人か就任するということで公募があったのがきっかけとなった。
「それまでは通訳になりたいという気持ちはなかったんです。通訳さんがヒーローインタビューに出て喋っているなっていう程度の関心でした。ただ野球は大好きでしたし、アメリカでプレーしていた経験、4年間大学で学んでいたことが活かせるんじゃないかなと思い立ちました」
ある程度イメージをしていた通訳の仕事だが、実際に現場に入って、いきなり難しさに直面した。
「2軍監督が選手に怒りをもって伝える時に、私が選手に“大丈夫だよ”みたいな感じで柔らかく伝えてしまったんです。それを見て2軍監督から“自分は怒ってるんだから君も怒らなくちゃだめだよ”と言われました」
その言葉は叱咤なのか激励なのか。そのままを伝えていいものかどうか。言葉を正確に訳することだけが通訳ではないが、勝手に忖度してもいけない。だから矢嶋さんは一工夫。
「例えば外国人投手がマウンドにいて、そこに投手コーチや捕手が行く。それはきっちり訳す。でもまあカッカカッカしてるときもありますから、最後に“がんばれよ”の一言ぐらいは付け加えたりするときもあります。ピンチですから不安みたいな顔よりは、Let’s Go! 絶対大丈夫ダブルプレーで帰ってこれる、さあ行こうぜ的なことをニコっと笑いながら」
それもマウンドだけではなく、ブルペンや練習時間などで普段のコミュニケーションがあるからできること。外国人プレイヤーの気持ちや考え方だけではなく、普段から監督や投手コーチの考え方を把握しておくことも通訳の大切な心得。だから緊迫した現場で正確さと矢嶋さんの気持ち、その両方で通じ合うことができるのだろう。そして通訳が目立つ場面といえばヒーローインタビュー。
「試合の流れ、アナウンサーの方が、こういう時にはこういう質問をされるのかな? みたいなことは常日頃思ってますね。自分だけではなく他の通訳の方のもビデオを撮って研究しています。他の通訳の仕事も勉強になりますから」