令和初の選抜に「オールドユニ」で臨む意味 中京大中京が示す「名門」のプライド
中京大中京は昨夏の愛知大会から23年ぶりに伝統の「立ち襟ユニ」を復活させた
戦前から脈々と積み重ねられてきた重みが違う。自分たちだけのチームではない。10年ぶり31度目の選抜出場を決めた中京大中京。2010年から指揮をとる高橋源一郎監督が言う。「身が引き締まる思いです」。昭和、平成と名門として歩んできたチームが臨む令和初の春の舞台。その”伝統の象徴”が、甲子園のグラウンドを彩ることになる。
昨夏の愛知大会から23年ぶりに復活した「立ち襟」のユニホーム。1996年春まで着用されていたモデルで、これまでの丸首ではなく襟が数センチ立っている。「伝統ある中京大中京。その姿に思い入れのあるOBもいる」と高橋監督。原点回帰の意味も込められているが、単に過去の踏襲とは違う。「我がチームは時代の流れに合わせて変化を届けていく。新しい中京大中京を見せたい」。その変化を示すアイコンが、ユニホームでもある。
春夏通算11度の全国制覇を飾った輝かしい実績を、時代が変わっても上乗せしていくのも使命。昨春の選抜で同県のライバル・東邦が優勝したことで、トップで並んでいた春の歴代優勝回数は抜かれ、55勝で単独トップだった勝利数も1つ上回られた。過度に数字にこだわることはないが、それが名門の証でもあっただけに「中京大中京が日本一というのは譲れない」。プロ注目の実力者でもある中山礼都遊撃手は、はっきりと言った。
過去を振り返れば、プロで活躍する多くの名選手も輩出してきた。野球日本代表「侍ジャパン」の稲葉篤紀監督も、前身の中京高時代にプレーしたひとり。そんな大先輩は、夏に東京五輪という大一番を控える。「僕たちが選抜でいい結果を残して、五輪を戦う稲葉さんに少しでもいい形でつなげることができたら」と中山は思いを込めた。
チームは昨秋の明治神宮大会で優勝。ドラフト上位候補でもある150キロ右腕・高橋宏斗投手を始め、総合力の高さから堂々の優勝候補に名を連ねる。「甲子園に出ることが目標じゃない」。そうナインたちは口をそろえる。目指すのは、選抜、夏の甲子園、国体を含めた「高校4冠」。新時代の始まりに全盛を迎えるべく、懐かしの戦闘服で聖地に立つ。
(小西亮 / Ryo Konishi)