体重の増減、辛辣な選手評…いつか来る球春を待ちながら楽しみたい「選手名鑑」
過去には住所など個人情報の掲載も、野球界の様々な情報が見えてくる
現役選手にも感染者が出るなど、新型コロナウイルス禍は、いつ終息するかが見通せない状況だ。しかし、いつかはプロ野球シーズンも始まる。今はシーズン開幕を気長に待つしかない。書店には2020年シーズンに向けて各社からでた「プロ野球選手名鑑」が並んでいる。これらの「選手名鑑」をじっくり読み込むのも「野球がない春」の楽しみ方の一つだろう。
プロ野球の選手名鑑は、1960年代に野球雑誌が多く創刊された時期に、雑誌の一コーナーとして掲載されるようになった。当初は、選手名とデータだけが書かれたものだったが、選手写真を載せる雑誌が増え、切り離して携行することができる「付録」になり、さらに単独で「選手名鑑」として発刊されるようになった。「選手名鑑」発刊当初は、モノクロ印刷だったが、最近はカラー印刷が当たり前になった。そういう形で「選手名鑑」も進化している。
選手ごとの情報も大きく変わっている。1970年代くらいまでの選手名鑑には、選手の住所が記入されていた。ファンレターを送りたいニーズがあったからだ。個人情報が尊重される現在では考えられない。新人の中には、監督と住所が同じ選手もいた。監督宅に居候していたのだ。電話番号も掲載されていたが、若手選手の中には「〇〇様呼び出し」というのもあった。自宅に電話がなくて、隣家や大家さんに呼び出してもらう選手もいたのだ。
当時の「選手名鑑」には、選手の愛車、タバコの銘柄、好きな女性のタイプも載っていることが多かった。マイカーを持つのがあこがれだった時代には、選手がどんな車に乗っているのかは大きな関心事だった。毎年のように車種が変わる選手もいた。
また1960年代の男性の喫煙率は75%もあり、喫煙が当たり前だったのだ。選手名鑑でも「吸いません」と書いている選手は少数派だった。今も愛車、好きな女性のタイプを掲載している「選手名鑑」はあるが、好きな女性は、独身の選手だけ聞くようにしているようで、既婚者は「既婚」になっている。また血液型を紹介している「選手名鑑」もあった。血液型による性格診断を信じている監督の中には、これを参考にしている人もいたようだ。
今も昔も変わらないのは、身長、体重、球歴、年俸などの情報だ。最近は、選手記録が充実している「選手名鑑」が多い。NPB発表のデータに加え、セイバーメトリクス系のデータをグラフやレーダーチャートを使って紹介しているものもある。打撃や投球だけでなく守備のデータも掲載しているものもある。