難病からの復活を目指す越智大祐 その内に秘められた使命とは
病に対して果敢に挑む姿勢
「復活してほしい。応援してます」、「病気なんかに負けるな」、「巨人ファンじゃないけど、戻ってきてくれ」……。ネット上のこのメッセージが巨人・越智大祐投手(30)へ届いているだろうか。
脊髄の後方に位置する黄色靭帯が骨のように硬くなってしまう病気、「黄色靭帯骨化症」という難病を患ったのは一昨年のことだった。同年6月に手術を受けて、今、復活への道を歩んでいる。マウンドに立ち、1軍で投げられる可能性は低いとされる。それでも懸命なリハビリで今年はイースタン・リーグで投げられるまでになった。
原因は不明。過去にはオリックスの酒井勉投手や宮本大輔投手が発症した。2人とも、1軍には復帰できずに引退を余儀なくされている。気持ちはあっても、体がいうことをきかなかった。
これまでこの病を患って1軍復帰できた例はない。これは周知の事実だった。しかし、越智は手術を選んだ。誰も成し遂げていない、この難病からの復帰を目指した。これはひとつの挑戦でもある。越智にとっては、見えない敵と戦うことに意味があった。「もう1度、1軍で登板できるように頑張りたい」。その決意は固かった。
チャレンジは、自分のためだけではなかった。病に対して果敢に挑む姿勢は、周囲に対する自分なりのメッセージでもあった。
この病気は下半身に痺れが出て、力が入らなくなる。場合によっては、歩行が困難になることも。全国には同様の病気に悩まされる患者が多くいる。最近では越智の後にもソフトバンクの大隣憲司が同様の病気と診断された。練習を始めているが、まだ不安は残る。越智はリハビリの結果、2軍戦に登板し、第一歩を踏み出した。復帰の前例のないこの病気から、地道に、そして力強く前に進んだ。それは大隣をも勇気づけるような一歩だった。
来年、結果が出なければ、引退することも考えているという。それくらい自分を追い込んでプレーする意気込みでいるということなのだろう。ファンに限らず、越智を応援する人たちは、1軍の試合で投げられるようになるところだけを見たいのではない。必死に立ち向かおうとするその姿を応援したいのだ。越智の歩みはこの病気に限らず、すべての病と闘う人たちへのエールになっている。そんな力がプロ野球選手にはある。
その越智は来年、背番号が「67」に変更となる。仲の良い坂本勇人の「6」と長野久義の「7」。その2人に力をもらって頑張るのだという。応援しているのは2選手だけではない。一緒に強力な中継ぎ投手として活躍した山口鉄也は帽子のひさしに今年までの背番号「22」をマジックで書き込んでいた。チームメートも待っている。首脳陣も期待をしており、来春のキャンプのメンバー入りもあり得る。
2014年、越智には、難病を克服してカムバックしてほしい。そして、もう1度、スポットライトを浴びてほしい。多くのファンがそう願っている。その道のりは険しいが、全国の人たちがその挑戦を見守っている。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count