「ダサい人間になるな」甲子園の道が閉ざされた盛岡大付ナインを救った先輩の言葉
盛岡大付は3年ぶりの夏の甲子園を目指していた「練習をする意味があるのか」
第102回全国高校野球選手権大会の中止が決まり、約1か月。代替大会、引退試合、上の舞台、将来の夢……。球児たちも気持ちを切り替え、新たな目標に向かってそれぞれのスタートを切っている。新型コロナウイルスは彼らから何を奪い、何を与えたのか。Full-Countでは連載企画「#このままじゃ終われない」で球児一人ひとりの今を伝えていく。
夏季岩手県高校野球大会地区予選が1日、開幕した。昨秋の県大会で優勝し、東北大会4強の盛岡大付は4日に江南義塾との初戦を迎える。新型コロナウイルスの影響で甲子園への道が閉ざされて1度は気持ちが沈んだが、救ってくれたのは先輩によるメッセージ動画だった。盛岡大付で野球に打ち込んできた意義を見つめ直し、3年生37人は全員で戦い抜くことを誓う。
春夏通算15度の甲子園出場を誇る盛岡大付。昨年はセンバツを経験したチームだったが、岩手大会は3回戦で敗れた。秋は県大会で連覇を達成。この夏、3年ぶりの甲子園を目指していた。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で春季大会が中止となり、5月20日には選手権大会の中止も決まった。「夏の甲子園がなくなった」。その事実に「練習をする意味があるのか」と3年生の気持ちには迷いが出た。
昨秋、県大会で優勝したとはいえ、小林武都主将(3年)は「正直、まとまっていなくて。メンバーだけが頑張るチームでした」と振り返る。公式戦に出場するメンバーとメンバー外で意見の食い違いがあったり、コミュニケーション不足があったりしたという。東北大会では優勝と2年連続でのセンバツ出場を目指して戦ったが、準決勝で仙台育英(宮城)に2-9の8回コールド負け。投手陣は19安打と打ち込まれ、打力が持ち味の盛岡大付は3安打、13奪三振と抑え込まれた。「仙台育英は強すぎましたが、まとまっていれば、違った結果だったかもしれない」と小林主将。後悔が残った。
東北大会4強でシーズンを終えると、普段の生活からメンバーとメンバー外に関係なく、会話をする機会を増やそうとチーム全体で努力した。コミュニケーションを取ることで壁は徐々に薄くなり、物静かでおとなしかった部員が明るくなるなど、変化がはじまった。今年に入ると、「自分の思っていることを周りにしっかりと伝えられる人間になろう」と自分の意思を示し、責任を持つことも確かめた。
こうして結束を高め、春を迎えるはずだったが、新型コロナウイルスの影が忍び寄る。プロ、アマチュア問わず、さまざまなスポーツが中止や延期になる中、高校野球も春季大会が中止に。そして、夏の甲子園、地方大会もなくなった。心構えができていたとはいえ、いざ、中止が決まると心に穴が空いた。