“究極の文武両道”目指す開成野球部 自粛期間は「両方でプラスになった」
東大合格者数全国1位を誇る開成では、ほとんどの時間が個人練習に充てられる
高校野球東東京大会は30日、ネッツ多摩昭島球場で1回戦が行われ、開成が13-2の6回コールドで葛飾商を破り2回戦進出を決めた。立ち上がりは相手先発石井彪斗投手を攻めあぐねるも、3回、4回とそれぞれ4得点のビックイニングを演出。5回に1点、6回にも4点を加え、葛飾商を突き放した。守備では3番捕手の内田開智主将が異なる3投手を好リードし6回2失点。投打でつけ入るすきを与えなかった。
東大合格者数全国1位を誇る開成。野球部も半数近くが赤門を目指し文武両道の日常を送る。部員のほとんどが塾に通っており、全体練習は週にわずか1日。練習のほとんどを自主練で補う開成ナインにとっては、自粛期間も大きな障害にはならなかったという。
「ウチはもともと個人練習が中心というより、個人練習しかしてませんからね(笑い)。最低限打つ、投げる、捕るということができないと試合になりませんから。みんなで揃ってやるのが部活動、という概念がそもそもない」と青木秀憲監督。「私自身、監督というよりも選手を監督やコーチに育てるような役割を引き受けてます。上からあれやれこれやれと言われてやることはない。練習や大会も基本的には選手任せ。スタメンもキャプテンの内田が持ってきたものに目を通すだけです」と選手の自主性に任せた指導を心がけている。
むしろ、自粛期間中は練習と勉強を両立する絶好の期間だったと語るのは、東大野球部を目指す内田主将だ。「変な話、自分の時間が増えたぶん野球と勉強のどっちにもプラスになった。野球をやってる以上どうしても勉強では遅れていますが、それをハンデと捉えるより、“遅れてる”という意識を持つことで無駄な時間を作らないようになる。コロナで練習ができない期間はこれまで以上に無駄な時間を作らないよう、頭を使って勉強も練習も効率よく進められました」と胸を張る。
中学時代に所属した東京神宮シニアのコーチとは「開成で硬式を続けるなら六大学でプレーしろ」と約束を交わした内田。当時のチームには今、青森山田でエースを務めるドラフト候補、150キロ右腕の小牟田龍宝投手もいた。バッテリーを組んだこともある旧友の活躍を目にしつつ、自身は勉強と野球の両立の日々を送る。「小牟田はプロでも、六大学に来るシニアのチームメートは他にもいる。負けられないです」。日本中の球児が戸惑い、涙にくれた日から2か月前。確かな目標を持つ者はひるまず前を向き続けている。
(佐藤佑輔 / Yusuke Sato)