「背中の方から球が…」サイドに転向した巨人の新星・大江竜聖に見えた工夫
ロッテや巨人でプレーした小林雅英氏が4年目の左腕の可能性と課題に言及
■広島 9-2 巨人(2日・東京ドーム)
セ・リーグ首位を走る巨人は2日、本拠地東京ドームで行われた広島戦に2-9で敗れ、3連戦3連勝を逃した。結果は大敗だったが、巨人にも流れを引き寄せるチャンスがあった。かつてロッテの守護神として活躍した小林雅英氏が、勝敗の分岐点を指摘した。
巨人は1回、先発の桜井が鈴木に先制2ランを被弾。2回にも西川に適時打を許し、この時点で0-3となったが、なおも続いた無死満塁のピンチでは追加点を許さず。その裏、大城の5号ソロで2点差に迫った。
続く3回、桜井が1死二、三塁のピンチをつくると、原監督は早々と左腕の大江竜聖投手にスイッチ。大江は左打者の田中広を空振り三振に仕留め2死としたが、この後が誤算だった。続く投手の遠藤に、カウント1-1から3球目の138キロのストレートを中前に運ばれ2点追加。1-5となり、試合の流れは決した。
小林氏は「原監督はあえて3回途中で先発投手を降板させ、勝ちにいく姿勢を示した。普通に遠藤を打ち取っていれば、流れが来ていたはずで、巨人にとっては致命的な1球になりました」と分析。「内角を狙ったストレートが、真ん中に来ました。投げ切れなかった大江君の技術不足。ただ、2球目のスライダーに手が出ず見送っていたので、配球として変化球を続ける手もあったかもしれません」と見た。
それでも、大江は4、5回も続投し、結局2回2/3を投げ2安打4奪三振1四球無失点(遠藤の2点適時打による失点は桜井に記録された)。特に左打者に対しては、のべ5人を無安打4三振に封じ強みを発揮した。
4年目・21歳の大江は、約3か月前までオーバースローの本格派左腕だったが、コロナ禍による個人調整期間中、首脳陣の勧めでサイドスローに転向。急造ながら1軍レベルに仕上げ、7月24日に今季初昇格後、中継ぎとして重宝されている。2日前の7月31日の同カードで6回1イニングを無安打無失点に抑え、プロ初勝利を挙げたばかりだ。
小林氏は「右打者に対してはプレートの中央付近を踏んで投げ、左打者に対しては一塁側を踏んで、より打者にとって背中の方から球が来るように見せるなど、工夫がうかがえました」と評価。一方で「左投手にとって、対左打者の場合は打者が目安になるので、比較的コントロールをつけやすい。対右打者の時に甘くなりがちなので、意識して練習する必要があるでしょう」と課題を挙げた。
巨人は負けたとはいえ、今季22勝12敗2分けで貯金10。若手期待株の大江にとって躍進の糧になるなら、決して無駄な敗戦ではない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)