蔦監督から大谷まで 甲子園を描いた米話題映画の監督が語る、海外から見た高校野球
「高校野球は日本社会の縮図」海外へ向けた映画で甲子園を題材とした理由
コロナ禍で戦後初めて夏の甲子園大会が中止となった今年、海外からの視点で日本の高校野球を捉え、米TV局「ESPN」でも放送されたドキュメンタリー映画『甲子園:フィールド・オブ・ドリームス』(作品URL:https://koshien-movie.com/)が全国の映画館で順次公開となっている。製作した山崎エマ監督はイギリス人を父に持ち、インターナショナルスクールを卒業後、9年間ニューヨークに留学した経歴の持ち主。どんな思いで高校野球を題材に選んだのか。山崎監督に聞いた。
当初、日本独特の文化を何かの形で世界に紹介したいと思っていた山崎監督。日本とアメリカを行き来していた2017年の夏、テレビを通じてあらためて日本文化としての高校野球の大きさに気づいたという。
「日本にいたときは当たり前だったことが、海外に行って初めてその良さを再認識するようになりました。決まった時間に電車がきて、みんな並んで順番を守る、自分のことは自分でやる、他者への一定の配慮がある。それって世界ではまったく当たり前ではないこと。学生の部活動も、人間教育の一環という考え方は海外にはない。高校野球でも靴やヘルメットをきちんと並べたり、身の回りのことを自分でやったり、控え選手がレギュラーのために献身したり……。ああ、高校野球って日本社会の縮図だなと」
撮影を始めたのは2年前の2018年。第100回記念大会に臨む横浜隼人、花巻東の2校に密着し、横浜隼人の水谷哲也監督とその息子で花巻東に進学した公省選手、花巻東の佐々木洋監督を中心としながら、その他多くの選手にもスポットを当てた群像劇となっている。
「池田高校の蔦監督のお孫さんが映画監督という縁で、徳島出身の水谷監督を紹介していただきました。一方で、アメリカで放送する以上はメジャーリーガーとも縁のある高校をと思っていたところで、水谷監督が大谷翔平選手や菊池雄星投手を輩出した花巻東の佐々木監督の恩師であること、水谷監督の息子さんがその春から花巻東に進学することが後々わかった。とはいえ、甲子園が題材である以上、両校が地方大会を勝ち進むかどうかはわからない。試合結果や状況によってはまったく別の選手を取り上げたり、全然別の作品になっていたかもしれません」