大声援が呼んだ番狂わせ 松山東が掴んだ「7000人、82年」分の1勝
松山東カラーの緑で染まった三塁側スタンド、OBらの想いが甲子園を支配した
25日の第87回選抜高校野球大会5日目、史上最長ブランクとなる82年ぶり出場の21世紀枠・松山東(愛媛)が登場した。試合は下馬評の高かった二松学舎大付(東京)を5-4で破る番狂わせに。優勝した1950年夏の選手権以来となる甲子園での白星を掴んだ。
夏目漱石の小説「坊っちゃん」のモデルとなり、俳人・正岡子規、ノーベル賞作家・大江健三郎ら、多くの文化人を輩出した愛媛県屈指の名門進学校。偏差値70の県立秀才軍団が、東京の強豪私学になぜ勝てたのか。その要因となったのは、スタンドに結集したOB、地元ファンらの82年分の想いだった。
甲子園球場は、緑色に染まっていた。そうは言っても、グラウンドの芝生ではない。三塁側アルプス席が松山東カラーのグリーンの帽子、メガホンで彩られていたのだ。しかも、アルプス席は満員となって入り切れず、その緑色は三塁側内野席からネット裏付近にまで溢れていた。
野球部は1892年創部。松山商との統合時代を含めて、ひと昔前の愛媛県では甲子園常連校だった。しかし、近年は済美などの私学に覇権を奪われていた。それだけに82年ぶり出場は、人々の心を大いに揺さぶった。
OBや地元ファンらがバス65台以上で甲子園に駆けつけ、82年ぶりの春を見届けた。その数、実に約7000人。1つのストライク、1つのアウトのたびに球場を支配する大声援は、異様と呼べるほどだった。